裸の身体※

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裸の身体※

 浴室で火照った身体をタオルで拭うと、先に歩き出したチーフが僕の手を引いた。いまいちどう振る舞って良いか分からなかった僕は、チーフのそんな気遣いがありがたい。 腰にタオルを巻いた裸の男が二人、これからする事など口にしなくても分かると言うものだ。けれど、実体験の乏しい僕にはこれからどうするのか、内心ビクビクしていたんだ。  チーフは僕をベッドに座らせ少し待っている様に言うと、冷蔵庫から500mlの水のペットボトルを取り出して一本僕に手渡した。そういえば浴室ですっかり興奮してしまった僕は喉がカラカラだった。 僕が礼を言って美味しそうに飲む姿を見つめながら、チーフは僕に言った。 「これから洸太はいっぱい喘ぐだろうからな。喉潤しておかないと痛めそうだ。」 そう言われた僕が思わず咽せると、チーフは楽しそうに僕の背中を軽く叩いて耳元で囁いた。 「初心な洸太は、揶揄っても楽しいな。」  どう考えても何枚も上手なチーフに僕が敵うはずもなくて、僕はもうすっかり降参した気分でペットボトルをサイドテーブルに置いて、目の前に立ち塞がっているチーフに言った。 「そうやって揶揄われるなら、僕だってチーフを利用しちゃいますよ。…裸見せて貰えますか?」 言ってからドキドキと心臓が破裂しそうになったけれど、チーフは片眉を上げて少し不満気な表情で水を飲み干した。 「…さっきチーフって呼ぶなって言ったろ?隼人。隼人って呼んだらいくらでもお願い聞いてやるけど。」  いきなり名前呼びなんてハードルが高いけど、よく考えたら僕らは付き合っているわけじゃない。名前呼びなど意味はないんだ。僕は喉を動かして少し掠れた声で囁いた。 「…隼人さん、僕、隼人さんの全身が見たいです。」 すると隼人さんはニヤリと色っぽく笑うとサッと腰のタオルを剥ぎ取った。浴室でこっそり盗み見た隼人さんの裸は惚れ惚れする様な筋肉美だった。中心に張り詰めた昂りがその彫刻の様な身体に唯一の生々しさを与えていた。  「ご感想は?俺もこんなしみじみと鑑賞されるのは初めてだけど、前戯としてはアリかもしれないな。洸太のその物欲しそうな顔が結構くるから。」 僕はハッとして隼人さんを見上げた。僕は顔はますます熱くなるのを感じながら呟いた。 「…欲しいですよ。今まで映像や画像の中にしか無かったものが目の前にあるんだから。」 僕の自暴自棄な言葉には返事をせずに、隼人さんはベッドに座った僕を引っ張り上げて立たせると、代わりに自分はベッドに腰掛けて言った。  「交代だ。今度は洸太が俺に全部見せてくれ。あのミコトが洸太とリンクしてる証拠を見たいな。安心しろ。俺は筋肉バキバキに萌える訳じゃないからな。」 そう言って楽し気に僕を見つめた。座りながら開いた脚の間の隼人さんのシンボルが時々ビクリと揺れるのを目の端に残しながら、僕はさっき隼人さんが立っていた場所に立つとゆっくりとタオルを解いた。 すっかり出来上がっている自分自身が恥ずかしい。舐める様に全身を隼人さんに見つめられて、その視線が僕の中心に残ると恥ずかしさに居た堪れなかった。  「洸太、後ろ向いて。」 そう言われて僕はホッとした気持ちで、慌てて後ろを向いた。少年時代に野球をしていたせいで、下半身が身体に見合わず大きい僕はそれがコンプレックスだった。 けれどミコトになってポーズをとってSNSにアップするたびに、お尻が大きくてエロいだとか、色っぽいとコメントが届く様になった。だから今ではコンプレックスも僕のチャームポイントだと思える様になった。 隼人さんは僕のお尻をどう感じるだろうか。  ふいに抱きしめられて、僕はお尻に生々しい隼人さんの興奮を感じた。それはため息の出る様な刺激的な出来事で、僕は思わず身を固くした。 「いいね、洸太の後ろ姿。ミコトの四つん這いとか色っぽいなって思ってたけど、生の洸太はもっとエロいな。それに俺も人の事言えないけど、すっかり興奮してる洸太可愛いよ。」 途端どこかプツリと、僕を堰き止めていた何かが切れる気がした。ああ、僕は自分の性癖も欲望もこの人に見せても受け止めてもらえるんだ。そう思って仕舞えば、僕は振り返って夢中で隼人さんにキスしていた。  隼人さんにベッドに押し倒されて、口の中を長い舌でなぞられた僕は無意識に高まった股間を隼人さんに押し付けた。応えるように押し付け返す隼人さんは、顔を引き剥がして僕に言った。 「まずは後ろ可愛がらせて?でも無理だったらイヤって言っていいから。分かったな?」 唇を光らせてそう言う隼人さんに、僕はまるで孵化したばかりの雛の気持ちで頷いていた。
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