私の思い出

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「お母さーん。朝ご飯まだー?」  キッチンに立つ私の背中に向かって、娘の果歩が聞いた。  ランドセルを隣の椅子に置き、足をバタバタさせて座っている。 「はいはい、ちょっと待っててね」  そういって、私は炊飯器のふたを開けた。炊き立てのご飯の香りは、いつ嗅いでも気分がいい。  以前の勤め先を退職し、専業主婦になってもう七年がたつ。  サラリーマンの夫は優しく愛情深い人だし、一人娘にも恵まれ、平凡だけど幸せな日々を送っていた。  主婦業はもちろん大変だが、やりがいもちゃんとある。夫と娘を心から愛しているので、少しぐらい大変なことがあっても乗り越えられるのだ。 「早くご飯ちょうだい。学校に遅れちゃうよ」 「はいはい」  果歩の薄いピンク色の茶碗にご飯を盛り、テーブルに置く。  テーブルに並んだ茄子のお味噌汁と目玉焼きは私の好物でもある。 「わあ、おいしそう」  果歩は目の前に置かれた朝ご飯を頬張り始めた。  夫はとっくに食事を終え、仕事に行ってしまっている。  果歩が期待に満ちた表情で聞いた。 「ねえ、お母さん。秋ってご飯がおいしい季節だよね?」 「そうだね」
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