夏の夢の2人

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「夏休みも終わるな」  俺は雲ひとつない空を見上げながら言った。  照りつける太陽の光が眩しくて、顔をしかめる。  そんな俺に、 「8月31日だからな」  下から冷静な声。  俺は声のした方に目をやる。  すると、声の主もちょうど俺を見上げたところで、不意に視線が交差する。 「眩しいな」  そう言って、丸縁眼鏡の奥の目を細める。 「ははっ、夏だからな」  俺はそう言って視線を戻し、手摺りに両手を掛けると眼下を見下ろした。 「眩しいのは夏のせいではない。太陽のせいだ」  天乃の声が背中に聞こえ、俺は苦笑する。 「それで、地村はどうして学校の屋上にいるんだ?」  訊かれたところで、俺にも答えはわからない。 「さあ」  首を捻り、「天乃は?」そう返した。 「私こそわからない」  天乃が薄く笑ったのが聞こえた。  見ると、微かに吹いた風が、ショートボブを揺らしていた。
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