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 かちりとノブを回してガスを切った。  湯気の立つ鍋をおたまで混ぜて、器に移す。スプーンと一緒にお盆に乗せて部屋のドアを開けた。 「はい、キュウリ粥できたよ」 「わー待ってました」  たまご粥に乱切りキュウリを突き刺した謎料理を水川の元へ持っていくと、彼女はゆっくりと上体を起こした。制服のまま寝ていたせいでブラウスにはいくつか皺が寄っている。  さらりとした前髪を耳にかける仕草も、ふーふーと熱いお粥に息を吹きかける姿も、どこからどう見ても普通の女子高生なんだよなあと改めて思う。 「河童ってほんとにキュウリ好きなんだな」 「うん。日本人がお米好きなのと一緒だね」 「逆に嫌いなものってあるの?」 「外来種」 「そういう切実なやつじゃない」  河童すら外来種に脅かされてるのか。あの川にもブラックバスやブルーギルなんかがいるんだろうか。  僕は以前一度だけ訪れたことのある美しい清流を思い出す。
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