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小学校四年に上がると、叔父さんと言う人が現れた。
母の弟に当たるようだ。
ひ弱な私を心配して、外の空気を吸って身体を動かしてはどうかと誘ってくれた。
どうやら母の提案らしい。
それから毎週日曜日になると、叔父さんの車に乗って十キロ程先のハイキングコースに出かけた。
山道を走ったり、体幹を鍛えようとくねった細長い小川を飛び越えたり、片足で岩場に案山子みたいに立ったり、時には草むらに寝転がったりと、しんどくはあったが、それなりに楽しくもあった。
ただそれ以上に、叔父さんは優しかった。
でも私が弱音を吐こうとすると、叔父さんは「今諦める事は簡単だ。でも、もう少しだけ頑張ってみよう。君は頑張れば出来る子なんだ」と励ましてくれた。
そんな言葉、今まで先生にすら言われた事が無かった。
ある時、私に驚いた出来事が起こった。
ずっと苦手だった駆けっこが、五年生の運動会で一等を取ったのだ。
まさか勝てるとも思ってなかったクラスメイトらは、
「どうしちゃったの?」
「ぶっちぎりじゃん!」
などと囃し立てる始末だ。
「なんか、、調子良かったんだよ」と、私もまんざらでもない。
それから益々、叔父さんとの秘密の特訓に (友達にも誰にも言っていない ) 力を入れるようになり、またこの運動会がきっかけで、クラスのみんなとも徐々に打ち解けて行く事が出来た。
この頃からか母は、私の顔を見ると明るくなったと嬉しそうに言ってくれた。
言葉にはしなくとも、心配してくれていたのだろう。
小学校も卒業を控えた頃から、叔父さんは顔を見せなくなって来た。
出張が多くなり、中々来れないと、母は言う。
残念だけれど叔父さんからの言付けを守り、一人で自転車を漕いで行き、あの山道を走った。
もう日曜日の日課だ。
そして月日の経つのもあっという間で、私は十三歳。
中学校へ入学した。
近隣の小学校の四校が、一つの中学校へ進学する。
最近は一クラスの生徒数も減ってきたと、古株だと言う先生はぼやいていた。
元々が引っ込み思案の私は、また始まる新しいクラスに馴染めないでいた。
それも仕方がないかと、少し諦めてもいた。
そんな時、初めての友達が出来たのだ。
よっちゃんだ。
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