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「風が冷たくなってきたわね」
マリーの大きな花柄のワンピースの裾を、風が揺らした。
「そうだね。この町にも秋が来るんだね」
黄色くなり始めた街路樹を眺めながら僕は応えた。
僕がこの海辺の町に引っ越してきたのは3ヶ月前。日に焼けた肌に真っ白なビキニ姿のマリーの笑顔は、太陽よりも眩しかった。僕は瞬間恋に落ちた。
砂浜を裸足で手を繫ぎながら歩いた。少し前まではサンダルを履かないと足の裏が火傷してしまうほど熱かった砂浜も、今は冷たい。2人の足跡を波が消していく。
「ショウヘイの故郷ってどんな所?」
マリーは僕に寄り添い囁くように聞いてきた。
「そうだね。今頃は雪に閉ざされてしまっているかもしれない」
「雪?」
「うん。この町にも、もう少ししたら降るかもしれない」
秋は短い。気づくとすぐに冬はやって来てしまうものだ。でも今年はマリーがいる。マリーと一緒なら短い秋も堪能できるだろう。
「あ、赤いトンボ」
「トンボも恋の季節なんだよ」
「そうなんだ」
僕はマリーの肩を抱いた。マリーは僕の腰に手をまわした。暖かい。冬が来ても大丈夫そうだ。
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