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詩子はまだなにか言いかけて、諦めたように口を閉じた。
「もういい。私はもう雛にはついていけない。ううん、本当はずっと前からついていけなくなってた」
「なにそれ、どういう意味?」
「浩二くんから夢を奪って友だちも奪ったんだよ? 今浩二くんの心の拠り所は恋人である雛なんだろうけど……別に好きで付き合ってるんじゃないんだよね?」
その言葉に私は笑いだしてしまいそうになった。
なんで私が浩二と真剣交際をしなきゃいけないんだろう。
そんなの面白すぎる。
「当たり前じゃん。これはゲームなんだよ?」
「雛にとってはゲームでも、相手にとっては現実だよ。浩二くんは昨日でなにもかもを失ったってこと」
詩子はそう言い捨てると、私を置いて先に行ってしまったのだった。
☆☆☆
もしかして雛は浩二のことが好きだったんだろうか。
だからあんなに怒ってるのかな。
だとしたら、両足を切断したのが豊なら、怒らなかったとか?
どれだけ考えてみても私には雛が怒っている原因がわからなかった。
道徳とか、常識とか、そんなものはとっくの前に失っていた。
あるのは目の前のゲームと、取得できるポイントだけ。
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