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「夏凛か!どうした?無事か缶助君は......」
「お爺様、心配かけてごめんなさい、
缶助も無事に...でもないけど救出出来た
あちこち怪我をしてしまったけど命には
別状ないわ、お爺様色々とありがとうございました、お爺様の助けが無かったらもっと時間が
掛かっていたかも知れない、本当にありがとう
お爺様」
「いいんだ、夏凛も缶助君も無事ならそれで
いい、婆さんも心配しているから今代わるぞ」
「夏凛ちゃん、無事だったのね」
「お婆様、心配かけてごめんなさい
私も缶助も無事ですから安心してください」
「うんうん、無事ならそれでいいの
声を聞いて安心したわ、電話をくれて
ありがとね、お爺さんと代わるね」
「じゃ、明日顔を見に行くからな」
「うん、わかった待ってます」
明日は賑やか?になりそうだ。
その晩は缶助の部屋で私とりんは寝た。
*************************
翌朝、りんちゃんが私を起こしてくれた
胸の辺りをトントンと軽く叩くような
感覚で目が覚めた、りんが前足で胸の辺りを叩いていたのだ、寝ぼけ目で横を見ると
りんが笑顔で私を見ていた。
「りんちゃん、おはよ」
声をかけると私の顔をペロっと舐めた。
散歩に行きたいのだろう、缶助を起こさないように部屋を出る、スエット姿のままで
りんの散歩に行く。
出すもの出してスッキリしたのか自分から
事務所へ帰ろうと元来た道を引き返して行く
りんも缶助の事が心配なのかな?
自分の大切な人の事を心配
するのは、犬も人も変わりはないんだと
改めて感心した、というより驚いてしまった。
全てのワンちゃんにこのような感情が
あるのだろうか、りんだけが持ち合わせている
感情なのだろうか、その辺の事はりんに聞いて
見ないとわからないが.........
そういえばりんはお爺さんとお婆さんの元で暮らしていた。大好きなお婆さんが亡くなってしまい
寂しさを抱えて暮らしていた所で
今度はお爺さんとも離れなければいけなくなった
そんな寂しい思いをして来たりん。
今自分の一番大切な人が誰だかわかっているのかも知れない。辛い過去を背負って来たりん。
私の胸の中に熱い物が込み上げて来た。
「りんちゃん、これからも私達はずっと
一緒だからね」
と声をかけてしまった。
いつもより早く散歩を終え事務所に戻る。
事務所の玄関を開け中に入った途端、
二階から「どすん!!」と大きな音が聞こえた。
何だ?今の音は?......缶助?
そう思った瞬間、2階に駆け上がった。
扉を開けると缶助がベッドから
落ちて丸くなってうずくまっていた。
「缶助!」と叫びながらそばに行く。
胸のところを押さえながら苦痛に歪んだ顔をしていた。
抱き上げてベッドに寝かせようとしたが
起こそうとすると苦痛なのか声を上げて
痛がっていた。
「缶助!大丈夫?!」
と聞くと
「少しこのままでお願いします、時期に収まりますから」
苦痛で顔を歪めながらそう言った。
缶助の頭を私の足の上に乗せ落ち着くまで
しばらくそのままでいた。
どれくらい経ったのだろうか、缶助の顔から苦痛の色がなくなって来た。
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