11人が本棚に入れています
本棚に追加
木戸さんがそう言って手の甲をりんの鼻先に
差し出した、危ない!と思ったが、りんは
木戸さんの手の匂いを嗅いですぐに
尻尾を振り木戸さんに自分から近寄って行き
木戸さんの前でお座りをして笑顔を見せていた。
「朝早くから失礼しました。それでは僕はこれで」
と言って木戸さんは帰って行った。
木戸さんは知っていたのだ。
隊長の事も長谷川さんの事も加納さんの事まで
あだ名まで知っていたとは.........
実家のSPの人達は皆その筋の人達には
有名なんだ......初めて知った私だった。
それにしてもりんちゃんが警察犬の訓練?
それも試験を受ける?でも...............
それにしても木戸さん調書も取らず話だけ聞いて
帰って行った。一体何のために来たのだろうか
私に注意する為?りんの事をスカウトに来た?
多分そのふたつが目的だったのかも知れない
..................探偵業も危険な仕事だ、
これ以上缶助にも隊長達にも危ない思いは
させたくない............
缶ちゃんとも結婚するしここらが潮時かな......
そんな考えが頭をよぎった。
木戸さんが帰って暫くして両親と会長のお爺様と
お婆様、社長のお爺様とお婆様が皆一斉に
押し寄せて来た。
「缶助君はどうした!」父さんの第一声。
「2階で寝ているわ」
全員が缶ちゃんの部屋に行った。
「缶助君どうですか身体の方は?」
母さんが心配そうに缶助のそばに行く
「はい、全治2ヶ月と言われましたが
こんなのすぐに治して見せます」
「そう、頼もしいわね、でも無理は禁物よ
焦らずゆっくり治してね」
母さんが缶ちゃんに優しく言ってくれた。
お爺様がりんのそばに行き手を出そうとした
「お爺様!待って!」と止めた。
すると、りんの方からそばに行きお爺様の手の
匂いを嗅いで尻尾を振りながら笑顔を見せた。
今度はお婆様がりんに「おいで」と声を掛けた
尻尾をちぎれんばかりに振りながら
お婆様の所に行き甘える仕草までして
お婆様の懐に顔を埋めていた。
きっと亡くなったお婆さんの事を思い出しているのかも知れない、りんにとってお爺様、お婆様
は懐かしい匂いがあるのだろう。
「人懐こくて可愛いわね、いい子ねりんちゃん」
尻尾が扇風機のように回っていた。
亡くなったお婆さんにいつも言われていたのかも
知れない「りんは、いい子だね」と.........
それを思い出しているのかとても嬉しそうな
どことなく悲しそうなりんちゃんだった。
缶ちゃんが療養中、探偵仕事は断ることにした
「缶助君、キミも今回の事で懲りたんじゃないか?
二度も大怪我してこんな事していたら
いつか本当に命を落としてしまうぞ、
そろそろ本格的に私の仕事を手伝わんか?」
「ご心配をおかけしまして申し訳ございませんでした、実は僕も考えている事がありまして」
ここで缶助が痛さを堪えるようにしてベッドの上で正座をした。
最初のコメントを投稿しよう!