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時刻は16:00を過ぎた。
これは、どう考えてもおかしい。
缶助が連絡もなしにこんなに時間を空けるはずがない。
何かあったに違いないと思い、ボランテで
私はりんと依頼者の住所に向かった。
高城町3丁目23番地、目的地住所に着いたのだが
そこに相田と言う家は無かった。
むしろ、その場所は都内には珍しく
周りには、畑が広がっていた。
車を道路脇に停め、りんを下ろし
「りんちゃん、缶助の匂いはない?」
と、りんに言うと鼻を地面に擦り付けるように
匂いを嗅いでいる。
歩く先に小さな小屋のような建物があった。
りんがその建物の裏側に行く、すると
そこには缶助の自転車があった。
「この自転車!缶助のだ!」
周りを見回しても缶助の姿はない。
私の中に、不安が雪崩のように一気に
押し寄せてきた。
自転車の周りを注意深く何か手がかりがないか
探す、突然、りんが吠えた。
振り向くと何かを咥えて私の元へと駆け寄って
来た、りんが咥えていたものは
缶助の携帯電話だった。
ここで、缶助に何があったのか?
しばらく辺りを探し回った、しかし
何も手がかりになるような物は落ちていない。
「缶助!何があったの?何処に行ったの?
缶助の携帯電話を胸に抱きしめ
「お願い、缶助!何処にいるの?何でもいいから私に知らせて!」
と、祈るように携帯に言った。
自転車を小屋の横に置いてすぐに事務所に戻った
事務所に戻っても何をしていいのか
どうすればいいのか何も思いつかず手につかず
オロオロするだけの私。
事務所の中を行ったり来たりする私をりんが
ずっと見ていた。
その時は自分が『探偵』と言うことも忘れ
1人の女でしか無かった。
思いついたことと言えば、「母さんに電話する」
だった。衝動的に電話をしてしまい、
「母さん!私!どうしよう、どうしよう」
狼狽える私に母さんが
「落ち着きなさい!夏凛!どうしたの?
順を追って話しなさい!」
私ににキツく言った。呼吸を整え母さんに
缶助の事を話した。
「夏凛!あなたの今の仕事は何なの!
そんな事だから父さんに『探偵ゴッコ』などと
言われるんでしょ!缶助くんの方があなたより
立派な探偵さんよ、あなたが誘拐された時
1人であなたを探して事件まで解決して
それなのにあなたは何!ただオロオロして
あなたも今まで少なからずも事件を解決して
来たんでしょ!」
その時、ハッと我に帰った。
「そうよ、私はこの『NPD』の所長なんだ!
探偵なんだ!............
母さん、ゴメン、取り乱して、そうよね
私この探偵事務所の所長なんだよね」
「そうよ、だけど危ないことはしないでね
すぐに警察に連絡して缶助君を見つけて
もらいましょ」
「母さん、ごめんなさい!私どうかしてた!
缶助の事が心配で心配でそれだけしか頭の中に
無かった、私は探偵事務所の所長です、
警察の方には私が連絡するから、
ごめんなさい、心配かけて、でももう大丈夫よ
また、電話するから」
そう言って電話を切った。
母さんに余計な心配をかけてしまった。
あんな夢見て少女になっていて、いつもの
私じゃなくなっていた。
ここからが「呑兵衛・夏凛の捕物劇」の始まりよ
缶ちゃん、待っててね今助けてあげるから!
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