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「どの辺でその2人は争っていたんですか?」
お婆さんは指を差し
「あの植え込みのあるあたりかな〜」
「ありがとうございます」
と言って、すぐにその辺りを調べてみたが
何も落ちてはいなかった。
車に戻り、りんを連れて来て
「りんちゃん、何でもいいから手がかりを
探してちょうだい!」
と言って、りんのリードをフリーにした。
地面に鼻を擦り付けるようにして匂いを嗅いでいるりん。すると急に立ち止まり前足で
何かを掘り出すような仕草をした。
そばに行くと泥だらけになった手拭いのような物があった。
急いで薄手袋を付けそれを拾い上げ
広げてみる。
それは、やはり手拭いだった。
建設業者だろうか「・・・ナ組」と書いてあったが、組の前の字が汚れていて読み取れない、
それをビニール袋にいれる。
お婆さんに挨拶して急いで事務所に引き返した。
洗えば読めるのだろうが、もしも証拠品だったら
と思うと洗うことなど出来ない、
泥汚れを落とすと何とか読めるくらいにはなった
「タチバナ組」と書いてあるようだった。
すぐにネットで検索してみた。
建設業で「タチバナ組」と入れたら数十の
業者が出て来たが、まずはそれを都内に
絞り込む、すると数件までに絞り込めた。
またそこを絞り込む、
「高城町付近のタチバナ組」と......
すると一件ヒットしたのですぐその
タチバナ組に電話をした。
「もしもし、タチバナ組さんの事務所で
よろしいでしょうか?」
電話先には女性が出た。
「はい、そうですが」
「恐れ入りますがそちらに最近働かれた人で
『剣持孝信』と言う方はおりませんか?」
「はい?」
「剣持孝信という名前の方は働いて
いませんか?」
「剣持孝信?............そのような名前の方は
いないですね」
「それでは、ここ一ヶ月前ごろから働き始めた
方は?」
「え〜と、3人ほどいますね」
「すみませんがその3人の中で高城町に
住んでいる人の名前を教えて欲しいのですが」
「高城町ですか?その住所に住んでいる人は
いないですけど、あなたはどなたなんですか?」
「すみません、申し遅れました。その剣持の
親戚の者でして、急用で連絡をとりたくて
それではその3人の中で最近休んでいる方は
いらっしゃいませんか?」
「休んでいる人なら1人いますが?」
「お願いします、その人の名前を教えて欲しいのですが」
「はあ、名前は倉持義信さんですけど......」
「そうですか、ありがとうございました」
多分、住所も名前も偽って働いているに
違いない『剣持孝信』と『倉持義信』
似ている名前だし多分こいつに間違いない。
あとは高城町の不動産屋を虱潰しに当たってみるしかないか。
ここは、不動産業界で力のあるお爺様の力を
借りるか?
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