ぼくからしたらおやつのほうが大事なお話し

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 九月中旬にもなると、夏のような朝陽の眩しさも一斉に鳴き始める蝉の声も校庭の乾燥しきった砂埃も起きない。 いつしか空は高くなり、まだだれひとり登校してない早朝の学校は少し寂しかった。 「それにしても驚いたな。 青木の奴、いつからジュンのこと好きだったんだ?」 二週間前、一緒に帰ろうとジュンを探していたら、自転車置き場から慌てて走っていくあいつがいて、その先に立っていたのが青木だった。 ひょろながで筋肉ゼロの秀才。それは俺の勝手なイメージだけど、ジュンとの距離は果てしなく遠い奴というか、そもそも奴のことなんか考えたこともなかった。 だから、青木がジュンに顔を寄せて話しているのを見た瞬間、ピストルで心臓を撃ち抜かれたような衝撃を感じたんだ。それはいままで感じたこともなかった感情で、それ以来、俺はジュンの顔がまともに見れなかった。 それに、いままで気にもしていなかった青木とこのところ度々目が合う。 いかにも「僕は桜川さんに告りましたよ」的な意味深な目。そのたびにムカムカしてしょうがない。 「くそ、なんなんだよ!」 力任せに蹴ったボールは、大きく円を描く。
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