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宝を守れ
腹ごしらえも済み、いよいよ財宝や解体した竜を持って帰る段取りとなる。
「俺たちだけで全部は無理だ。一度王国へ戻って報告し、改めて人員の追加を進言しよう。持って帰れない分は盗賊が入れないように結界を張っておくとして……」
「問題は、竜の心臓だな」
今でさえ腐りかけている。これ以上腐らないように氷の魔法で冷やすにしても、麓の街から2週間かけて来た道のりを、この大きさの心臓を凍らせたまま王都まで運ぶのは困難に思える。
「腐りかけている部分は削って、変色が少ない所だけ切り分けて持ち帰るならなんとかなるかもしれん。それでも王都まで持つかどうかは俺の魔力が持つかどうか……」
魔導師殿が悩んで頭を抱えている。
「帰りの明かりは、あの古代の魔法道具を拝借してはどうでしょう?」
古代竜の寝床を半永久的に照らしている照明道具を指さして聖導師が提案した。
「確かにこれは良いな。持ち帰って研究にも使おう」
「魔導師殿、こっちの金銀財宝は検分終わったか?触れても大丈夫かな?」
「ああ。そこに置いてあるものは食事前に調べが済んでいる。大丈夫だ」
大きめのものは後回しに、細々としたアクセサリーの類いを背負えるだけ荷に詰め込むことにした。金細工は重量があり、偽物ではないのだと改めて感じる。
「……ものだ」
背後からかけられた隊長の声がよく聞き取れず、アレイスは振り返った。
「え?何か言ったか?」
隊長の次の言葉に、アレイスは眉を顰めた。
「この財宝は俺のものだ」
突然隊長が剣を一振り。
すぐそばで財宝を袋に詰めていた聖導師の首が胴と離れ、血飛沫があがる。
「隊長!?何を!」
「この財宝は俺のものだ」
隊長が同じ言葉を繰り返す。
「何を言っている?これらは王のものだ。自分で言っただろう……」
「財宝に、触るな」
剣術に長け責任感が強い隊長。
先ほどまでの彼と同一人物とは思えない目つきをしている。
何かの呪いに触れたのか?
話が通じる気配がしない。
「財宝……守る」
有無を言わさずに斬りかかってくる。
呪いに動かされているにしても、その剣技は調査隊一。
避けるだけで精一杯だ。
一体何が原因なのか……。
“100人の血を吸うまで殺戮を繰り返す剣”
魔導師の言葉を思い出す。
「隊長、剣を手放せ!」
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