宝を守れ・2

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宝を守れ・2

 アレイスが狙いを定めて放った矢は、隊長の利き手に命中。  カラン  音を立てて青白く光る剣が隊長の手から落ちた。  しかし。  武器を失った隊長はそのまま肉弾戦に持ち込もうとする。  剣の呪いではないのか?  隊長の大振りのパンチを躱し、少し距離をとったアレイスは冷静に素早く周囲を見る。  すると、全員が手あたり次第相手を見つけて攻撃を始めているではないか。  皆一様に「財宝、俺の」「触るな」とつぶやきながら。  この僅かな時間で、調査隊の人数がすでに半分になってしまった。 「これは一体……」  少し立ち止まった隙に距離を詰められ、隊長の手がアレイスに届きそうになった時、隊長が炎に包まれた。  後ろから魔導士が隊長に向けて炎の魔法を放ったのだ。  隊長がクルリと振り返り、燃えながら魔導士に抱きつく。  そのまま二人は一緒に炎に包まれた。  誰も、苦痛の声をあげないのが不気味だ。  ホッとしている暇はない。  奥から槍遣いがこちらへ向けて構えているのが見え、アレイスは素早く弓を引き絞った。 「すまん」  心の中で謝りながら放った矢は、槍遣いの胸に命中し、倒れた。 「財宝は、全部、俺の物だ!」  斧遣いが横から斧を振りかぶって来た。  それを避けようとした時、地面に転がっていた誰かの頭につまづいた。 「しまっ……」  斧を避けきれない!  万事休す。役に立たないと分かっているが、咄嗟に弓を防御に前へ出した。  斧遣いは、振り上げた斧をアレイスに下ろさなかった。  いや、下ろせなかった。  斧遣いの胸元から剣の切先が突き出して、アレイスの寸前で止まった。剣が引き抜かれると、斧遣いはアレイスに被さるように膝から崩れる。  その肩越しにアレイスが見たのは、これまでの何よりも信じられないものだった。 「エ……イク!?」
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