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ファーニル退治の歌
♪
人里離れた山奥で
静かに暮らしていた竜は
ある日突然人襲う
困った王様人集め
多くの兵が竜退治
向かうが一人も帰還せず
邪悪な竜を征伐せんと
最後に現る猛者8人ー ♪
「うーん……8人てリズムが悪いな。ねえエイク、ボクも含めてここ9人にしても良い?」
一行が緊張しつつ洞窟内を進む中、レイヴィンは一人陽気に歌ったり喋ったり。
「……お前、邪魔はしないと言ったよな?少し黙れ。せっかくファーニルが寝てる隙を狙おうとしているのに」
「あは。ごめんごめん。でも大丈夫だよ。どうせファーニルは耳が遠くなってる。年寄りだからね」
「何を根拠に」
レイヴィンは人の話を聞かず歌を続ける。
♪
大剣片手に大立ち回り
燃ゆ情熱の赤い髪
その名はエイク…… ♪
「あー……エイク、苗字は?」
「そんな立派なモンねえよ。ただのエイクだ」
「そっかぁー。じゃあ適当にカッコいい苗字付けとく?」
「お前な。いい加減に……」
「シッ」
エイクがレイヴィンを嗜めようとした時、そのレイヴィンから黙るよう口に指を当てられた。
「???」
グゥ〜
「あはは。お腹減っちゃった」
あまりにも緊張感に欠ける言動に、エイクのこめかみに青筋が立つ。
「レイヴィン、やっぱり帰れ」
「やだなぁ、怒らないで?君達とっても緊張してるみたいだからほぐしてあげようと思ったのさ」
「吟遊詩人にしては歌がイマイチね」
イルがため息と共に率直な感想を伝える。
「あっ!人が一番気にしていることを言っちゃう?ボク、大概のことは卒なくマスターしてきたつもりだけど、歌だけはなかなか上手くならなくてね」
「歌が得意じゃないのに吟遊詩人ですって?貴方、実際のところ何者?何が目的なの?」
「それはだから言ったじゃないか。君達の武勇伝を後世に伝えたいんだって」
「その歌で伝わるかしら」
「もしかして、竜の財宝を狙ってるんじゃないですか?」
隊員の一人がエイクに耳打ちする。その言葉はレイヴィンの耳にも届いていた。
「宝、ねぇ……。確かにファーニルが何を守っているのかも、気になるといえば気になるけれど、それよりも……」
「それよりも?」
「本当は、ボク、友達が欲しかったんだ」
「はあ?」
「あ、ホラ、もうまもなく目的地だよ?」
レイヴィンの指差す先には、洞窟内だというのに仄かな灯りが見えてきた。
その光の中、うずくまって眠っているように見える古代竜ファーニルの姿があった。
♪
山の洞穴その奥で
金銀財宝守るため
その身に呪いを刻まれた
眠れる竜の隙をつき
剣に弓矢に黒魔法
斧と拳と棍棒と
槍と聖なる神の加護
精鋭8人一斉に
勇猛果敢に挑んだが
竜の炎と爪牙に
なす術もなく次々と
一人、一人と斃れ行く ー ♪
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