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「はい、静かに。意見がある人は手を上げてから答えて。はい、十六夜さん」
「はい。確かに、日中はまだ暑いです。それは事実なんだけど、でもこの前雨が降った日なんかは涼しくて、少し寒いぐらいでした。あのときは男子もくしゃみをする人もいたぐらい涼しくて、暑さを感じてた人は誰もいなかったと思います。これから先、そういう日が増えてくるはずだから、もうそろそろ秋ってことでなにも問題ないと思います」
そうだそうだ、と女子。明らかに夏の男子勢と秋の女子勢に分かれている。
「いや、でも」と手を上げたのは炎天下くん。
「はい、どうぞ」
「雨が降った日が涼しかったのは確かだけど、でもさ、雨が上がった次の日なんかはまためちゃくちゃ暑くなって、三十度超えたんだぜ? 全然夏じゃん。俺はまだ夏は終わってないと思う。なんかさ、寂しいじゃん夏が終わるって。あんなに楽しかった夏が終わるって考えたら、俺すげー切なく感じるんだよ。だから、まだ終わらせちゃダメだと思う」
「炎天下くんはもう十分夏を満喫したじゃん。夏休みの宿題もやらずにずっと遊んでたんでしょ? いつまで夏気分なのよ」
鈴虫さんが呆れたような声でそう言うと、ドッと笑いが起こった。
「宿題のことは、関係ないじゃん……」
真っ黒に日焼けした彼は口を尖らせて声を落としていく。
「そうかなぁ、みんなちゃんとやってたのに自分だけやらずにずっと遊んでたなんてズルいよ」
「いや、それは……」
「なによ? なんか言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」
「いや、だから……」
「はいはいはい、話が違う方向に行ってるぞ。今は夏か秋かって話だろ? 炎天下くんは来週までにテキスト提出な」
「えーー? そんなの聞いてないよ」
「先生が今決めた。それより、いつから秋にするんだ? なんか話が平行線だなぁ」
「先生はどう思うんですか?」
神無月さんが尋ねる。彼女はクラスの中でも率先して発言をする優等生だ。
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