14人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「先生か? そうだなぁ、まあ確かに、男子の意見も、女子の意見もよくわかる。昼間はまだまだ暑いし、でも夕方なんかは涼しくて確実に季節は進んでるって思うなぁ。まあ、先生がここで答えを出すのもいいんだけど、やっぱりここはみんなで話し合って決めてほしいと思うんだ。いつから秋にするのか。大事なことだろ?」
先生はみんなの顔を見渡している。わたしとも目が合ってしまい、思わず視線を逸らした。いつから秋にするかなんて、正直どっちでもいい。夏なんて季節が進めばそのうち終わるんだから。なんでいつからとか明確にしなきゃいけないのか。
そんなわたしの気持ちを代弁するかのように、一人の男子が手を上げる。
「はい、如月くん」
「あの、ぼく塾があるんで、そろそろ終わりにしたいんですけど」
「ああそうか、それはすまない。ただなぁ、まだ決まっていないからなぁ。いつから秋にするのか」
「いや、どっちでもいいです。ぼくは本当にどっちでも。季節なんて勝手に進んでいくんだから、明確にいつから秋なんて言えないし、決める必要もないと思います」
「そんなことないぞ。いつまで夏が続いて、いつから秋がはじまるのか、それは重要なことなんだ。それによって世間の流れも変わってくる。たとえば、洋服屋さんなんかは秋物を並べるのにも一苦労するだろうし、スーパーでも秋の食材を店頭に置く時期も見極める必要がある。この微妙な期間っていうのは本当にみんな頭を悩ませているんだ。だから俺たちで決めてあげないと」
先生の意見に納得する生徒も多い。でもわたしはそれを聞いてもなお、意味のある話し合いには思えなかった。こんな無意味な論争をいつまで続けるのか。
そう思っていたら、先生がわたしの方を見て声を出した。
「菜花さん、きみはどう思う?」
「え、わたし?」
最初のコメントを投稿しよう!