夏の終わりの会

5/6
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「いやいや、おかしいって。まだまだ暑いじゃん。天気予報でも言ってたけどさ、十月入ってからも三十度を超える日があるらしいって話だぞ。暑いのに秋っておかしいじゃん」  空蝉くんは納得していない様子。 「そうだよ! そんなに慌てて季節を進めてさ、なんになるんだって話だよ」  炎天下くんの言葉に、十六夜さんが反論する。 「そんなに慌てて季節を進めて、とか言うけど、夏のはじまりのときはどうなのよ? あのときはまだ梅雨明けはしていなかったじゃない。それなのに、男子たちが『もう夏でよくね?』とか言ってさ、強引に夏にして。そのせいで今年の夏は水不足になったってニュース見てないの?」 「いや、それは……」  炎天下くんだけじゃなく、男子のほとんどが目を伏せている。どうやら図星だったようだ。 「温暖化のせいで日本の四季は変わって来ているってニュースでやってたけど、わたしは秋が好きなの。夏も好きだけど、秋の方が好き。秋になってやりたいこともたくさんあるし、楽しみにしてることだってある」 「秋のなにが楽しみなんだよ? ハロウィンぐらいじゃねーの?」 「いっぱいあるよ。キャンプに行ったり、天体観測をしたり、旬の果物食べたりさ、秋だってやれることはたくさんある」 「ふーん」とあまり興味なさそうな男子たち。その中でも如月くんだけは何度も時計をチラチラと気にしている様子だった。 「地球温暖化の影響で世界的にも気温が変化しているのは事実だな。そのせいで日本の四季は確かに変わってきている。夏がずいぶん伸びて、秋が極端に短くなってしまった。それは先生も残念に思っているよ。温暖化の原因っていうのは色々あって、二酸化炭素の排出量が主なところなんだけど、それ以外にも家畜が行うゲップによって出るガスが……」 「あ、先生、あの、そろそろ」  如月くんが手を上げて先生の話を遮る。 「ああ、すまんすまん。時間なかったよな。よし、まあとりあえず、今日は時間もずいぶん押してしまったから、答えは来週以降に持ち越しだ。この週末、それぞれ家に帰ってからもなんとなく考えておいてほしい。宿題だ。夏はもう終わりなのか、そして秋はいつからはじまるのか。これは大事なことなんだぞ。決して他人事だと思わずに。君たちの答えが世の中を変えるんだからな。はいじゃあ終わりの会を終わります。日直、号令」 「きりーつ、れー、さよーなら」 「さよーなら」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!