3人が本棚に入れています
本棚に追加
此岸に取り残された私には多くの迷いが纏わりつく。
どうしてここに居るのか。
何をすれば良いのか。
この先何のために生きなければならないのか……。
小さな骨になってしまったお母さんに問いかけても答えなんか出る筈がないのに、そんな言葉が絶え間なく頭の中を駆け巡っていく。
初めて迎えた盂蘭盆会。
亡くなった人はお家に帰って来てくれると言うけれど、結局写真に向かって一方的に言葉を掛けるだけで会話はにはならなかった。
傍に居る筈なのに、見えない私が悪いんだよね……。
だったら次は私から会いに行けばいいのかな?
彼岸に最も近づくといわれる夏の終わり。
いったいどれほど近づくと言うのだろう……。
お母さんの姿がかろうじて見えるくらい?
それともあの優しい笑顔がはっきりと見えるくらい?
もし……。
もし触れ合えるほど近づいてくれるなら、もう一度お話がしたい。
なんでも教えてくれたあの手に触れたい。
力いっぱい抱きしめてもらい……そっと頭を撫でてもらいたい。
でも、私には彼岸に行く方法がわからないよ。
どうすればそこに行けるの?
いくら調べてみても方法は一つだけ。
でもそれはお父さんが悲しむから……。
そしてお母さんは絶対に怒るから……だから選べない。
きっとこの先もずっと答えなんて見つからないままなのかもしれないね。
お母さんと一緒に笑って、泣いて……そして時々喧嘩もして。
去年までは当たり前だった事が当たり前では無くなったけど、それでも時間は無関心に過ぎていく。
頬を撫でる風の香りが変わる頃、窓の外で恋を囁く虫の音が、お母さんが居なくなって初めての夏に終わりを告げる。
最初のコメントを投稿しよう!