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ざく、ざく、ざく。
これは俺が、女友達の佐和子から聞いた話。
本人の話も不明瞭だったし、俺も彼女からざっくり聞いただけだから詳細はわかっていないことが多い。だから質問してくるのはいいけど、答えられないことも少なくないと思うから、そのへんは勘弁してくれると助かる。
佐和子は俺の高校時代の友人だった。
誤解なきように言っておくが、俺の彼女というわけではない。ガールフレンドって言うとなんだかそれっぽく聞こえるが、実際は“俺の高校時代の部活のマネージャー”だというのが正しい。
俺が野球部だったってことは、卓也にも話したことがあったと思う。甲子園を目指すとかけしてそんなレベルじゃなくて、それこそ県大会を突破できるかできないかってレベルのチームだったけど、俺は三年間すごく楽しかった。そして野球部みたいなバリバリの運動というのは、支えてくれるマネージャーあってこそ回るものだと思ってる。
佐和子はショートカットが可愛い美人で、背が高くて、みんなの姉貴みたいなタイプの女性だった。俺と同い年ではあったんだけども大人びていて、なんとなく後輩たちとまじって“サワ姉”って呼んでいたのをよく覚えている。
いかにもバレーボール部かなんかに所属していそうな運動神経の良い女子だったけれども、手先も器用で、部室の掃除や洗濯からみんなの手当、トレーニングの管理までバリバリにこなしてくれていた。
そして、俺達が危ないことをしたり無茶をしたら、まるでオカンみたいに叱ってくれる人だった。だからなんとなく俺達は彼女に頭が上がらないっていうか――そうだな、ガールフレンドっていうより実際は、恩人に近い存在だったのかもしれない。俺達の部活動は、彼女と彼女が率いるマネ軍団なくして成り立つものではなかったからだ。
そんな彼女から一か月ほど前、久しぶりに連絡が入った。お互い大学生になってからも時々メールとかではやり取りをしていたんだけども、電話で話すのは久しぶりで。電話の向こうの彼女はちょっと声が掠れていて、疲れきっている様子で気になったのだ。
そして、佐和子は俺に懇願してきたのである。
「今度会えないかな?〇〇駅のバーガーショップとかでいいから。実は、彬くんに相談したいことがあるんだよね……」
恩人で、ちょっと憧れていたマネージャーの美少女。
そりゃ、こんな風に頼まれて断れるはずがない。
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