新しい家族

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新しい家族

  美紗子は家から30分のところにある「緑川産婦人科」にいた。 「美紗子大丈夫だよ。もう少しで新しい家族の顔が見られるんだよ。美紗子ヒーヒーフー。はいもう一度、ヒーヒーフー」 「わかった。頑張るよヒーヒーフー。ヒーヒーフー」 「先生痛がってますけど大丈夫ですか?苦しんでますよ。先生」 「うーん双子だからね。やっぱりきつそうだなー。帝王切開の方が良さそうだなー。双子で一人が大きいですねー。帝王切開にしましょう。今から帝王切開の準備しますのでご主人廊下の椅子のところで待っていてもらえますか?」  「先生〜先生〜美紗子をお願いします。苦しんでますよ。美紗子〜」 「お父さん。そんなにおろおろしなくても大丈夫ですよ。落ち着いて下さい。そこの椅子に座って」 「宜しくお願いします。美紗子〜美紗子〜」 「くす、くす。。ご主人、初めてのお産だから心配なのね」 「新米パパのよくあるあるね」 「うろうろしても仕方ありませんよ。状況は変わりませんから。奥様も頑張ってますから大丈夫ですよ。お座りになって待ってて下さい」 直樹は相変わらずウロウロしていたが時間だけは過ぎて行った。 「遅いなー。もう二時間も経ってる帝王切開に切り替えたからそろそろじゃないのか?大丈夫かな?元気な子が生まれるといいんだけど?」 その時「オンギヤーオンギャー」 元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえた。  二人の看護師は赤ちゃんを一人ずつ抱いて直樹の側にやって来た。 「二人とも元気な女の子ですよ。一人の赤ちゃんはちょっと栄養もらいすぎちゃったのかな?ちょっと大きいわね。もう一人は普通の赤ちゃんの体重で3000gもう一人の子は4000gです。1000gの差があるわね。お母さんも元気ですよ。  病室に行きましょう。帝王切開ですからね。痛みがまだ出ると思いますのでその時は教えて下さい。痛み止めをを渡しますので。お部屋は103ですね。三人部屋です。もう、出産を終えた患者 さんが二人いる部屋ですよ」 直樹は「ありがとうございます」そう言って103号室に向かった。  直樹は103号室の表札を見た。 「まさか?同じ苗字?」 103号室のドアの表示には「井田と堺」と書いてあった。  「まさか〜恭介と陸?まさかねー。いくら家が近くてもそんな偶然?」 直樹はそんな事を思いながら病室に入った。 その病室に美紗子も運ばれて来た。 ベットの周りはカーテンで仕切られていた。 「大丈夫か?美紗子元気な赤ちゃんだよ。名前候補考えて来たよ。これ」 直樹は子供の名前を書いたノートを開いた。 「美穂 美奈 美優 美琴 直美 美里」 美紗子は言った「直樹考えてくれたんだー。ありがとう。私が考えた名前と共通な名前があるわ。 私と直樹の名前を一文字ずつとって直美。でも双子だから。もう一つ考えないとねー。それにしても皆んな美っていう名前が入ってるのね?」 直樹は言った「美紗子の美をどうしても入れたかったんだ。美紗子のように賢い女性になってほしいから」 美紗子は顔を赤らめながら言った。 「私は賢くなんかないわよ。仕事ばかりしてるし家の事皆んな直樹にお願いしてて悪いと思ってるし」 直樹は言った「そんな事ないよ。ほらここにいる赤ちゃん美紗子にそっくりじゃないか?目元は俺かなー?ちょっと垂れ目だ。美紗子に似ればキリッとしてたのに残念。こんなに可愛い子供を産んでくれたんだ。それだけで充分だよ。男には産めないからね」直樹はそう言って笑った。  美紗子は泣きながら「あなたを選んでよかった。これからも家事とかお願いするね」 「任しとけ。ところで直美「なおみ」とあと一つ名前どうする?」   美紗子は言った「直樹のように優しい子供に育ってほしいから美優「みゆう」がいいわ」 直樹は「じゃあそれで決まりだね」 二人は自分の子供の名前を決めて病室にいる自分達の子供を携帯の動画や写真をたくさん撮っていた。   「かわいいなー。きっと美人になるぞー。変な男とか寄ってこないといいけどなー。でも美人なら仕方ないかなー?美人の宿命」 美紗子は笑った。「直樹まだ赤ちゃんよ」 二人は自分達の赤ちゃんを見ながら幸せな気持ちになった。  「じゃあ美紗子も元気そうだし俺帰るね。麻酔が切れたら痛くなるみたいだからナースコールで看護師さん呼んで痛み止め飲むんだよ。明日も家の家事が終わったら寄るから」 「いいわよ。大変だから」 「家から近いから大変じゃないよ。じゃあまた明日」 そう言って直樹は病室を出て行った。 病室を出ると直樹は自分の両親や友人に電話をかけた。   「まあ、無事に生まれたのー。よかった」 「お祝い何がいいかしら?」「よかったじゃないか直樹これからはもっと責任が重くなるな」  直樹は電話で嬉しそうに子供ができた事を報告していた。  直樹は子供の為に自分ができる事はなんだろう。  この時、直樹は子供の為にもっともっと完璧に家事をこなし、完璧に育児をしなければいけない。 僕はこのままではいけない。責任をもつ立場になったのだから。。。  直樹は電話を切ったあとそんな事を真剣に考えていた。  それが後に直樹を変えてしまうきっかけになってしまうとはこの時、直樹自身気づいていなかった。  ただ二人の子供の為に直樹はそれだけを考えていた。  美紗子は普通に今まで通り幸せな暮らしができればそれでいいと思っていた。  直樹と直美と美優と自分の4人の温かい家庭いつも笑顔が絶えない家庭ただそれだけでよかった  この時、直樹と美紗子二人の考えが少し違うものになっていた。。。
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