第四章

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「いいとこだけど、ごめん。もしかしたらヤバいかも」  深山が僕の肩を叩き、プールの外を指差した。蛍のような光が点灯している。 「君たち、そこで何をしている!」  警備員が扉を開け、懐中電灯で僕たちを照らした。強烈な光に目が眩む。隣で深山が小さく息を吸う音が聞こえた。 「ここは任せて先に行けェーッ!」  突如跳ね上がる水飛沫。目を開けると、深山が警備員に向かって本気のバタ足をしていた。 「母さん、逃げよう!」  混乱する母の手を取り、僕はプールから這い出た。深山の攻撃により警備員が視界を奪われている隙に、出口へと向かう。水を吸った服が重い。口のなかは塩素の味がする。今すぐ倒れ込んでしまいそうなほどクタクタだ。だけど、心は軽かった。  深山、ありがとう。僕は心の中で呟いた。僕と出会ってくれてありがとう。僕を連れ出してくれてありがとう。君に出会えて、本当によかった。  深山に五日間の自宅謹慎が言い渡されたと知ったのは、週明けの月曜日のことだった。
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