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第五章
「稔、そろそろ起きなさい」
カーテンを開ける音と共に、母の声が振ってくる。眩しさから枕に顔を押し付け二度寝しようとする僕の肩をとんとん叩き、笑って言った。
「今日からあの子、来るんでしょ?」
頭が一気に冴え渡り、僕は勢いよく身を起こした。そうだ、今日は深山の謹慎解除の日だ。そして、最後のプール授業の日でもある。
「今度深山くん連れてきてちょうだい。お母さんも挨拶したいから」
あの日から一週間が経った。母は年中吊るしっぱなしだった風鈴を納屋に片付けた。扇風機と蚊取り線香も一緒に。母に笑顔が増えたことを、兄さんも喜んでくれている気がした。
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