第五章

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 一週間ぶりの深山を見て、僕は愕然(がくぜん)とした。なんとプールサイドに直接腰掛けているのだ。リクライニングチェアはおろか、つば広のUVカット帽子もパラソルも見当たらない。日差しの下の不服そうな表情に、僕は出会った頃の深山を思い出した。 「一体どうしたんだ?」 「パパにいい加減やめなさいって言われてさあ。グラサンだけは死守したよ」 「やけに素直だな」 「もう謹慎はこりごりだからね」  光を反射する水面、さざなみの煌めき、バタ足で上がる水飛沫、クラスメイトたちの笑い声。どれもが美しく、そしてありふれている。 「キミは入ればよかったのに」 「(あかね)が謹慎中は入ってたよ。気持ちがよかった」 「あっそう……ってなんで下の名前!?」  深山が目を見開き、時が止まったように僕を見つめる。 「こうしてプールサイドに並んで話せるのも最後だろ? だから今日は見学でいいんだ」  耳を赤くして戸惑う深山をよそに、僕は鞄から水筒を取り出した。 「飲むか?」  深山は素直にそれを受け取り、勢いよく傾け、そして吹き出した。 「ちょっとなにコレ! 水じゃないじゃん!」 「フルーツ牛乳さ。これくらいの校則違反は許されるだろ?」  夏に幕を引くように、秋の風が頬を撫でた。
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