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帰郷の理由
エリから電話なんて、何年ぶりだ?
幼なじみのエリは所謂ヤンキーで、同じ中学だったがほとんど出席していなかった。
結構な美人なんだが、眉毛全剃り、金髪パーマで台無しにしてたな。
美獣なんちゃらとか言うレディース暴走族の総長もやってたっけ・・・喧嘩もよくしていたけど、負けたって話しは聞いた事が無い。
でも、本当は凄く良いヤツだ。
ガキの頃に火事で両親を亡くし、塞ぎ込んでた俺を毎日遊びに誘ってくれた。
まぁ、おかげで俺も中学の頃はヤンキーだと思われて腫れ物扱いされていたけど・・・今となっては、良い思い出だ。
高校は別々だったから、まともな友達も沢山できた。
修と希は元気かな・・・結婚式以来、会って無い。
おっと、思い出に浸ってる場合じゃなかった。さっさと電話に出ないとキレられる。
「もしもし」
「よう、セータ久しぶり。ちょっと頼みがあって電話したんだ」
「どうした、金に困ってるのか?」
「ナメんなよ、ちゃんと仕事くらいしてるっつーの!ウチは話したことねぇけど、引っ越した先のアパートにセータのダチが住んでんだよ」
「俺のダチ?」
「ほら、好きだったのにヒヨって何にも言えずダチと付き合う事になったって言ってただろ?」
「まさか、修と希か?」
「そうそう!前にバーガーショップでかち合った時、紹介してくれたよな。二人とも目は合わせてくれなかったけど」
まぁ、そういう偶然もあるだろうな。そんなに広い町でも無いし。
そう思いながら、俺はエリに尋ねた。
「で、それと頼み事が関係あるのか?」
「あぁ、何か様子がおかしいんだよ。そりゃ、何十年も経ってるから歳とって見た目も変わるとは思うけど・・・ウチの記憶だと、希ちゃんってメチャクチャ可愛かったから」
憧れの女性が歳をとって変貌するなんて、良くある話だが・・・聞くのが怖いな。
すっかり肉付きが良くなっているとか?
「・・・今はどんな容姿なんだ?」
「やつれて、髪はボサボサ、目の下に隈、子供も学校に行かせてないみたいだし、家事をしてる様子もなくてベランダで煙草吹かしてる。旦那もたまにしか帰ってきてねぇ。明らかにヤベェ感じなんだ。近いうちに様子見に来てくんねぇ?なんか、怖くてさ」
修と希が育児放棄してるなんて、信じられないが・・・確かに気になる。
「教えてくれて、サンキューな。今すぐって訳にはいかないから、仕事が一段落ついたら行くよ」
「悪い、何か警察とか児童相談所とか苦手でさぁ」
「世話になってたもんな。行く前に連絡する」
「あぁ、面倒かけてゴメン。でも、何かさ・・・セータに伝えなきゃって思ったんだ」
通話を終えた後、本日二回目の深い溜め息を吐く。
エリは嘘とナンパな男が大嫌いなヤツだから、疑う訳じゃないが・・・二人の事を良く知る身としては信じがたいな。
社会人として、しっかり仕事に区切りをつけたら町へ行ってみよう。
後日・・・ろしぃと共に参加した企業案件の打ち合わせ会議を終えた清太は、すぐさまアパートに帰って帰郷の準備に取りかかろうとしていた。
「ちょっと、オタマネ。なんか、急いでる?」
「帰郷するんだ」
「えー!?辞めんの、会社!?」
「何でそうなる?ただ帰郷するだけだ」
「そっか。てか、ご飯くらい一緒に食べて行こうよ~」
「週刊誌の記者にネタ提供したいのか?外に出たら、タクシー拾ってさっさと帰れ。領収書忘れんなよ」
「子供扱いやめてよね。そうやって、すぐ大人ぶるんだよねオタク君はさぁ~」
ろしぃの嫌味を無視して、さっさとビルから出た俺は片手を上げてタクシーを呼んだ。
荷物を軽くまとめ、車で故郷の町へと向かう。
今からだと、夜には到着する。
ハズだったが、事故渋滞で町に着いたのは23時過ぎだった。
こんな時間に修と希を訪ねるのは、流石に非常識だな・・・とりあえず、エリに到着した事を電話で報告するか。
「遅かったな」
「斯々然々で、かなり遅くなった」
「とりあえず、飲み屋街に来な。おごるから」
ホテルに車を置き、スマホに送られてきた地図を頼りにエリが指定した店に向かうと・・・キャバクラじゃねぇか!?
「背がでかくて、目付きが悪い・・・あんた、セータさん?」
「あ、はい」
「オーナーから聞いてるよ。入りな、可愛い娘が待ってるZE!」
客引きの兄ちゃんが誘われ、店に入ると着物姿の綺麗な女性が笑顔で会釈した。
会釈を返す俺を見て、女性は吹き出す。
「なぁに、普通に会釈してんだよ。見違えたか?ウチだよ、ウチ!ていうか、なんでスーツ?」
「エリか?眉毛あるから分からなかった。上司に頼んで仕事早めに切り上げさせて貰って、そのまま来たからな」
「とりあえず、今日は飲もう。酒、大丈夫だよな?」
「そんなに強くは無いから、ほどほどに頼む」
キャバクラなんか、だいぶ昔に接待の帰りに半ば無理矢理連行されて以来だな。
両隣に若い娘が座り、挨拶を交わす。
うわっ!胸が見えそうなセクシーなドレス・・・目のやり場に困る。
俺を見ていたエリは眉をしかめている。
「何だよ」
「いや、その反応と困り顔見て・・・魔法使いかなって」
「それ、三十路まで女性経験無いって話か?」
「いや、ゴメンゴメン!そんな事は流石に」
「童貞だが、何か?」
エリと共に両隣に座っていたキャバ嬢達も驚いている。
「全く否定しないところは昔と同じで妙に男らしいな、セータは」
「恥じる事でも無いしな。俺は三次元より二次元の方が好きだし、女性経験が有ろうと無かろうと世界は何一つ変わらんだろ」
「まぁ、確かにね。最近はオナホールあれば女いらないって言うし」
捉え方にもよるが、配信ならアウトだな。
そんな事を思いながら、俺は水割りを一口飲んだ。
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