膝枕と洞窟

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膝枕と洞窟

社会人の報告は結果から! 僕は黒江さんに、甘えて膝枕して貰っている。 膝の柔らかさは想定の範囲内だったが・・・黒江さんは巨乳なので所謂、膝枕幸せサンドイッチ状態になってしまった。 膝枕+顔面にオッパイが当たっている状態の事を言う。 ちなみに、仰向けなので呼吸はできるがオッパイに遮られて視界は塞がっている。 すまない。希、叶・・・情けない僕を許してくれ。 だが、一線は越えない! 断固たる決意を保つべく、僕は黒江さんに疑問を投げ掛けて気を紛らわす。 「何で、僕と黒江さんが同室なんですか?」 「理由の一つは・・・子供達が、私と一緒だと緊張すると言って嫌がるんです」 「子供達?黒江さん、お母さんだったんですね」 「あっ!その、違うんです!引きちぎった親指以外の指から生まれたので、出産した訳では無いんです!」 そんなに慌てて否定しなくても良いと思うのだが、どちらかと言うと指を引きちぎったという内容の方が怖い。 でも、神話か何かで涙から生まれた神様とかもいた気がするし・・・そういうモノなんだろうな。 一人で納得しながら「そうなんですね」と相槌を打つ。 「もう一つは、更に新しい加護を与えられるか試す為です。笑助から聞きましたが、喉を切られた傷の治りが早かったそうですね?希な事ですが、前にオデコの傷を治した際に注いだ力から新たな加護として自己治癒の力を得たのかと・・・もしかしたら修さんは複数の加護を得られる特異体質かも知れません」 なんか、ちょっと剣道が出来るくらいで大した個性を持ち合わせていない僕がここに来て特異体質だなんて・・・嬉しい事ではあるが、こんな状況にならないと知り得なかった才能とは因果なモノだ。 「では、また力を送りますからリラックスしていて下さい。島につくまで時間はかなりありますから眠ってしまっても構いませんよ」 こうして、再び僕は黒江さんから加護を得る為に力を注いで貰った。 でも、それをすると黒江さんの半霊体とかいう身体が不安定な状態になってしまうのでは? そんな事を考えながら、黒江さんの温もりに包まれて目を閉じた。 「・・・おい」 誰かが呼んでいる・・・この声は、笑助さん? 「おい、起きろブラザー。島についたぞ」 身体を起こして見渡したが、黒江さんの姿が無い。 そのまま笑助さんに連れられ、クルーザーを降りると・・・そこは海と繋がった洞窟だった。 壁には灯籠が備え付けられている事から人の手が加えられてたのが分かる。 「ここが拠点だ。これから、俺様達は手分けして島にある結界ってのを破壊しに行く」 「唐突すぎて、話についていけないです」 「島の中心に山があって、その頂上あたりに白波が住まう寺がある。だが、外敵が入ってこれないよう結界が張られている。東西南北に祠があって最低でも二つは破壊しないと結界は解けない。つまり、白波を討ちに行けないって訳だ」 なんかゲームのイベントみたいなノリだ・・・相変わらず、現実味が無い。 そう思いながら、僕は更に笑助さんに尋ねた。 「僕は笑助さんと共に行動を?」 「いや、ブラザーは黒江様と洞窟の奥へ向かってくれ。ここに、白波を討つのに必要な武具が隠してある・・・らしい」 武具・・・伝説の武具的なモノが? もしかして、僕は火事で意識を失ってゲームみたいな世界の夢を見ているのでは? 病院でしたように、頬っぺたをつねってみたがやはりただ痛いだけだった。 気を取り直し、再び笑助さんに尋ねる。 「役割は分かりましたが、結界と言うのは容易く壊せるモノなんですか?」 「鬼が守ってるだろうから、倒さなきゃならん」 当たり前のように言う笑助さんを見た後、僕は香住さん達に視線を向けた。 僕の視線に気づいた杭杉が眼鏡のズレを人差し指で直しながら口を開く。 「心配そうな目をして見ないで下さい。私達が低俗な鬼ごときに敗北を喫する事など有り得無いのですから。特に長男であり、最強のこの私が低俗な蛇鬼ごときに敗北を喫する事など有り得ません」 相変わらず、くどい喋り方だ。 「あら、あたし達の心配してくれてるの~?優しい子ねぇ~ でも、誰彼構わず優しくしてると痛い目に合うかもよ?」 藍花がニヤニヤしながら僕を見ながら言った。 この人を嘗め腐った態度は、本当に鼻につく。 「修君、さっきは不愉快な思いをさせてすまなかった。だが、心してくれ・・・清太と対峙したら決して気を許すな。常に身構え、油断を怠らないように」 念を押され、色々と思うことはあったが僕は素直に頷いた。 もし、清太と再会して人のままなら・・・話をするのが先だ。 笑助さんが雇った探偵や香住さんの情報が真実とは限らない。 直接会って話さないと・・・あれ? そういえば、黒江さんの姿が見えない。 「笑助さん、黒江さんは?」 「黒江様はブラザーに力を注いだから、半霊体が不安定な状態だ。クルーザーのリビングで休んでる。黒江様が動ける状態になるまでは待機だ」 「分かりました。皆さん、お気をつけて」 笑助さんと香住せんは振り向き、僕に軽く手を振った。 杭杉と藍花は知らん顔でさっさと行ってしまった・・・どうやら、僕に対して興味や関心は無いらしい。 まぁ、お互い様だから別に良いけど。 目的が一致していて、協力しなければならなくても好意的に接する気が起きない・・・なんて事は事だ。 人間関係で無理をするのはストレスの原因だし、無理強いするのもされるのもストレスが溜まる。 ストレス解消法とか人それ是れに色々あるだろうが、一番良いのはストレスを感じない環境を作る事だろう。 仕事以外の事には触れない、触れさせないくらいの関係性の方が上手くいく事もある・・・きっと、今がそれだ。 黒江さんが回復したら護衛について洞窟の奥にある武具を取りに行くのが僕のやるべき事・・・余計な事は考える必要は無い。 そんな事を考えながら、僕は黒江さんの様子を伺うべくクルーザーに戻った。
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