清太の憂鬱

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清太の憂鬱

釈 清太 年齢35 身長178cm 体重72kg 趣味はホラーゲーム、オカルト巡り、アニメ鑑賞、筋トレ、その他色々・・・生粋のオタク。 苦手なモノは火、幼い頃に火事で両親を亡くしてからはお爺さんとお婆さんと共に過ごした。 故に、住んでいるアパートはオール電化である。 髪は黒の短髪、つり上がり気味の切れ長な目をしており、怒ってないのに怒っているように見られがち、体型は撫で肩で筋肉質、好きな食べ物は鶏肉料理、高校時代は剣道に打ち込んでいたが卒業を期にスッパリと辞めた。 大学を卒業した後、配信者事務所ストリーム プロダクションに入社。 今は人気女性配信者のマネージャーである。 配信者がより楽しく配信を行い、より多くの視聴者を獲得できるように、配信スケジュールや内容、視聴者とのコミュニケーションの取り方など、様々なアドバイスをすることが主なお仕事であり、正に縁の下の力持ち的な存在である。 ちなみに、服は仕事用のスーツと運動用のジャージしか持っていない。 彼は今、プロテインドリンクを飲みながら事務所のパソコンから担当している『ろしぃ』の配信をチェックしていた。 「はーい!みんなのハートを独り占め、愛の独裁者ろしぃの配信はじまるよー!今日も楽しんでってねぇー!」 流石に、今回は大人しくやってくれよ?前回、センシティブな発言連発してヒヤヒヤさせられたからな。 そう思いながら画面を睨むように見ていると、後輩が声をかけてきた。 「ウッス、セータさんお疲れッス~ まだ帰らないんッスか?」 「明日、企業案件の打ち合わせあるんだよ。だから、内容確認してまとめとかないと」 「忙しいッスねー!不思議発見ごっこもなかなかしてないみたいッスし、フラストレーションたまってるんじゃ?」 「言い方よ。こないだ、船まで借りて見に行った島も漁師さん達はみんな知ってる無人島だったしな。なかなか未知との遭遇は難しい。だが、そこにロマンがある」 「セータさんの事、ガチで尊敬してるッスけどソレに関しては共感無理ッスわ!てか、ろしぃちゃんガンガン配信するから大変ッスね」 「まぁ、それも来月までだ。担当を女性にしてくれるらしいからな」 「やっぱ、そうなるんッスね。三年も一緒にやって寂しくないッスか?」 「全然。年内にはウチの事務所じゃ初の100万人登録者になる予定だからな。伏せてはいるが、ガチ恋勢にマネージャーが男だとバレたら火のない所に煙がたちかねないからな。英断だろ」 「そうッスよねぇ~ 俺も、ろしぃさんみたいなガチ可愛い人のマネやってみたかったなぁ」 「ワンチャン、自慢のマグナム銃口カットすればなれるかもよ?」 「その発言、配信だったら終わってますよ?じゃ、お先しますねー!」 去り行く後輩に手を振り、また画面とにらめっこする。 三年か・・・早かったな。 元々、微妙な人気のアイドルグループの隅っこにいた彼女が芸能界と合わないという理由で事務所に入って、多種多才っぷりを発揮できたのは本当に良かった。 それにしても、異世界的に言ったらマジでチート能力者だな。 七頭身で身長152cm、アイドル時代は黒髪ロングで地味だったが、赤紫のショートヘアに変えたら、色白の肌も手伝って、まるでアニメの世界から飛び出してきたような存在感を醸し出した。 ちょっと練習したら何でもできてしまい、歌ってみたから踊ってみたもハイクオリティ。 ゲームもやたら上手く、ゲーム配信者を集めた大会でも無双。 台本を疑うレベルの逆転劇で度肝を抜いたり、たまにコスプレしたら必ずトレンドに載る。 確かにマネージャーとして頑張ってはきたが、正直なところガチャを回して出てきたキャラが育ててみたら最強すぎた・・・つまり、全ては彼女の努力と才能の賜物ってやつだ。 俺じゃなくても、彼女は育ったと思う。 ただ、あの子には自由奔放な性格以外に問題点がある・・・引き継いでくれる女性マネには、しっかり伝えておかなきゃな。 ろしぃの配信を見ながら、俺は憂鬱な気持ちになり深い溜め息をついた。 ろしぃの配信を見届け、仕事を始める。 アパートでも可能だが、誘惑が多すぎてヤル気が起きなくなるので仕事は事務所でカタしてから帰宅したい。 そんな事を考えている最中、スマホにメッセージが届いた。 ろしぃからだ・・・そういえば、配信内容を確認した後は感想を送るのが習わしだったな。 普段は忘れる事なく、当たり前にやっていたのに我ながら迂闊だった。 不味いなぁ・・・多分、ご立腹だ。 メッセージを確認すると、案の定キレてる。 『ちょっとオタマネ!ろしぃの担当外れるからって、手ぇ抜いてんじゃないでしょうね?今すぐ感想を述べよ!』 オタマネ(オタクマネージャー)って呼ぶなって何百回言ってもわかんねぇんだよな。 だが、今回は俺に非があるし素直に謝ってからソレっぽい理由をつけておこう。 『すんません。勿論、配信は確認しました。注意したセンシティブワードにも触れてないし、良い感じの配信でした。グッジョブ!実は今、企業案件の確認してて送信忘れてしまって。これが俺にとって、ろしぃさんとやる最後の企業案件になりそうなんで絶対に成功させたい』 どうよ、この熱い思いは?届け、そして機嫌よなおれ! 『本気で、そう思ってる?』 『本気と書いてガチですよ』 『なら、今回だけは大目に見てやろう。以後、気をつけるように!』 フッ、チョロいな。 所詮はまだ酒も飲めない19歳のひよっこ、俺が社会人になってから培ってきた謝罪力を持ってすれば、どうという事は無い。 でも、今年で二十歳になるんだな・・・やっぱり、早いな三年は。 物思いに老けっていると、今度は着信音が鳴った。 こんな時間に誰だ? そう思いながら画面を見ると、幼なじみのエリからだった。
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