夏だからね

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「暑い」 「夏だからね」  そう言って僕の隣に座って僕に寄り添うナツ。夏休みが終わる前に遊びに行こうとか言われたけど。わざわざこんな暑い日に会わなくても。 「あの、暑いんだけど」 「夏だからね」  それに、さっきからそれしか言わない。 「あんまりくっつかれると汗かくんだけど」 「夏だからね」  他に、何か言うことはないのかな。 「あの、何でさっきから『夏だからね』としか言わないの?」 「夏だからね」  ダメだ。何を言ってもまるで「夏だからね」という音声を録音したのを繰り返し流してるみたいに答えるナツ。 「ちょっと、ナツ」 「夏だからね」  何だっていうんだ。  ちょっと、気味が悪いよ。 「夏だからね。夏だからね。夏だからね」  こわいこわいこわい。 「夏だからね」  その時僕の首筋にひんやりしたものが。 「ひゃあ!!!」 「夏だからね。暑いからひやっとさせてあげようかと思って。ひやっとしたでしょ?」  笑いながら僕の目の前にアイスを差し出すナツ。 「……うん」  現在進行形で。  だって今君の持ってるアイスって、僕の家の冷凍庫にあったやつだよね。昨日買ってきたばかりで、誰にも食べられないようにマジックで名前書いたもの。何で君が持ってるのかな?  一ヶ月ぶりくらいに会うのに。
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