第17話 ケンタよ、お前もか1

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第17話 ケンタよ、お前もか1

「ほう? それで生徒会室に連れて行かれたと?」 「そうなの! わたしから飛び込んでったわけじゃないからね!」  昨日の顛末(てんまつ)を話しつつ、ご機嫌取りの茶菓子をそっと未希の近くへ移動させた。  本日のお品書きは、朝早くから並ばないと買えない数量限定の超レアスイーツ。並んだのは家の使用人だけど。 「わたしが行く前に王子とユイナには会わなかったわけ? ん、これ旨い」 「山田は理事長に呼ばれてるとかであの場にはずっといなかったよ。ユイナも最後まで顔出さなかったし。あ、紅茶もっと飲む?」  そういやダンジュウロウもマサトもケンタも、三人ともユイナのことを気にかける様子もなかったな。生徒会として、みんなちゃんと仕事してるのか?  でも山田のいない生徒会にユイナが現れなかったってことは、さ。 「やっぱりユイナ、王子ルートに入ったってことなのかな……?」 「その線は濃厚かも。流れ的にはかえって良かったんじゃない? それならそれで対策が立てやすくなるし」 「攻略対象たちとフラグ立てまくった甲斐があったってこと? おお、やるじゃんわたし」 「調子乗んな、ボケ」 「はひ、モウシワケゴザァマセン……」  未希ってばお人形みたいにおとなしそうな顔してるけど、ブチ切れたらホント怖いんだ。  幼いころからの刷り込みで、条件反射で頭下げちゃうんだな、コレが。 「でもさ、華子の話聞いてると、ケンタの反応だけは不可解なのよね」 「と言うと?」 「あんたたち姉弟、そこまでべったりって感じじゃなかったでしょ? この前の通学途中のスリ未遂事件だって、ケンタって言うより保健医とのイベントだし」 「確かに。ケンタとはこれまで通り、普通に姉弟として接してるしなぁ。急に溺愛されるなんて奇妙な話だよね……」 「王子が見舞いに来たりして、シスコンに火がついたとか?」  あのケンタが?  ハナコの記憶をたどっても、そこまで姉弟愛が深いとも思えない。 「うーん、シスコンの()なんて、ケンタから今まで感じたことなかったけどなぁ」 「じゃあなんかほかに思い当たることはないの?」 「さっぱり」  なに未希ちゃん、その疑いのまなざしは。 「まぁいいわ。とにかく華子がこなしてるイベントって、ユイナが取りこぼしたやつっぽいから。ケンタは未消化イベント多いから特に注意して」 「りょーかい」  ってか、実の弟とフラグ立てたって、別にどうにもならないんじゃ? 「言っとくけどケンタルートのバッドエンドって、ヒロイン監禁ヤンデレコースだかんね?」  ふぉっ、姉ちゃんまで監禁されるんかっ。 「華子相手にそこまでなるかは不明だけど、ゲームの強制力がいつ発動するか分からないし」 「分かった、本気で気をつける。でもユイナのヤツ、もっとヒロインの仕事しろって感じなんだけど」 「選んだルートによっては、発生しないイベントもあるからね。そこはどうしようもないのかも」  だったらなんで起きないはずのイベントが、悪役令嬢ポジのわたしに起こるんだ?  マジ勘弁してほしい。 「それにしてもさ、未希はどうして昨日わたしが生徒会室にいるって分かったの?」 「ああ、それは目撃情報もあったんだけど……」 「あったんだけど?」  変な場所で言葉を切ったかと思うと、未希がぐっと顔を近づけてきた。 「ところで今、制服ってどこにある?」 「へ? 制服? 制服ならクローゼットにしまってあるけど……」 「そう」  なんでいきなりその質問? てか、なんで小声? 「やっぱ気づいてなかったんだ。制服の学年リボン、あるでしょ?」  学年リボンってのは制服の襟元にあるリボンのことだ。  真ん中にブローチが付いていて、その色が学年ごとに違ってる。だから学年リボンって呼ばれてるんだけど。 「それがどうかしたの?」 「アレについてるあんたのブローチ、魔力でGPSになってるから」 「は? GPS?」 「それ付けたの多分、シュン王子。ここだけの話ね」 「山田がっ!?」  どうりで隠れても見つけ出されるワケだ。山田のヤツ、今度問い詰めてシメてやるっ。 「ちなみに隠しカメラ機能もついてるから。さすがに盗聴はしてないみたいだけど」  ぬぁんですとっ!?  山田め、マジコロすっ。 「でもあのリボン、絶対に外しちゃだめだからね?」 「ええっなんでっ」 「今回だってあの機能拝借してあんたを追跡できたんだから。こんな便利なモノなくしたらモッタイナイでしょう?」 「そんなっ、プライバシーの侵害だよっ」 「着替えの時だけ気をつければいいだけの話でしょ? 休日は制服着てるわけでもないんだし」  そりゃそうかもしんないけど。 「これはもう決定事項。とにかくそのままつけておくこと!」  うわーん、未希の鬼軍曹っ。 「どのみちユイナの動向を見張らないと。それ次第で、こっちもどう動くか考えないとならないし。引き続き華子は攻略対象と接触禁止ってことで」 「アイアイサー!」  ってな感じで週末報告会議は無事に終了。  思いのほか未希のカミナリ、大きいのが落ちなくってほんとヨカッタ。  今回は激レアスイーツ様サマってことで。  なんてことをノンキに考えつつ、週明け学園に登校したんだけれど……。
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