2.館の女

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「奥方の相談を受けて、私は、その館まで行ったのですが、玄関の扉は開きませんでした。中から、縛られている様でした」 司祭は、そこまで話して、溜息をついた。司祭は青い顔をしていた。 「奥方の話と状況を考え合わせると、どうも私の手には負えないと思いまして、司教にご相談申し上げたのです。貴方の噂は、聞いていたので」  ファーレインは、控え目に微笑んだ。 「中に入らなくて、正解でした。相手は人間ではありません」  司祭は、顔を強張らせた。  司祭が通常の手順で祓えるのは、人の暗部に取り憑いた悪しき者――悪霊だけだ。  司祭の話に出て来た館の女は、取り憑かれている訳では無い、と、ファーレインは直感した。これは自分の領分だ、と。
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