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1.ファーレイン
その少年の瞳は、褐色と言うよりも、もっと明るく透明感のある色で、金色と言っても良かった。
ファーレインは、満月の瞳を宿したその少年を美しいと思った。
ファーレインがエランドルク王国の国境の町、グラブスに来たのは、昨夜。
この町の司祭に、ある仕事で呼ばれていた。マルク教の助祭であるファーレインは、その仕事が片付くまでは、その司祭の務める教会堂に身を寄せる。
少し赤みの強い金髪、薄い青い瞳のファーレインは、齢二十二歳。
元は、貴族の息子だったが、家が没落。母の願いで聖職者の道で出世を目指すことになった。
正直、自分は真っ当な聖職者にはなれないと思っている。
その教会堂では、家や親のいない子供を養っている。
共に朝の祈りを捧げ、朝食の準備をしていた子供たちの一人に、ファーレインの目は、吸い寄せられる。
さらさらの黒髪。金色の瞳。屈託のない笑みを浮かべるその少年は、見た目は、六歳くらいの普通の少年にしか見えない。でも、何か・・ぞわぞわする。
彼は、きっと、自分で自分の正体に気付いていない。
俺と同じ。
同じ匂いがする・・・。
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