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「君は、すぐ輪廻の輪に入れます」
冥界の管理官が、俺に言った。
俺は、ほっとしたが、少し不思議に思う。
「自殺って、地獄に行くんじゃないんですか?」
「そうです」
「え?」
「君は自殺じゃないですから」
俺は、目が点になる。
「自殺じゃない・・?」
「はい」
「え?あの遺書は?」
「知りたいですか?真相を」
「知りたいです」
「転生が少し遅くなります」
「構いません」
俺は管理局に留め置かれ、数日後、報告書を読ませてもらった。
犯人は母だった。
遺書は、小説家を目指していた俺が以前に捨てた原稿を母が見つけて捨てずに持っていて、それをとっさに遺書に見立て、自殺に見せかけたという。
俺が、中2から急に学校に行かなくなったから。
引きこもってしまったから。
俺の部屋に強引に入り、もめてる間に突き飛ばして死なせてしまった母は、動転して俺を自殺に見せかけるために下に落としたと言う。
あの原稿用紙は、俺が小説のアイデアを書き留めていただけだった。だが、母は、本気でそう思っていると勘違いした。息子の考えていることが分からな過ぎて、先が不安過ぎて、母はきっとおかしくなってしまったのだ。
俺の死体を前に、はたと我に返った母は、本当に泣いていたのだ。
きっと。
母が、俺の捨てた原稿用紙を発見しなければ、こんなことにならなかったのだろうか。
俺には分からない。
ただ、小説家を目指していただけだったのにな。
終り
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