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亜里香side 私が正しいと思うんだけどどうですか
山積みの無駄になった廃棄物と皿とコップが乗ったトレーを片手に部屋の扉をもう片方の手で開ける。
こんなんでグチグチ言うなって思われるかもしれないけど、割とこの一瞬の動作がちょびっとだけ手首にくる。
小さい頃とかファミレスで人数分のプレート一気に持ってくる店員さんとかいたじゃん?
簡単そうってか、物凄い軽そうに見える。
あまりにもヒョイヒョイって皿持ってったりするから。
いや、もう慣れなんだけどね。
それでも痛いもんは痛いし重いもんは重い。
無になってるってだけの話。次から次やんなきゃだからさ、効率大事。
この感覚ってあれに似てるよね。
フライパン初めて持った時のあの感覚。意外と重くない? フライパン。
ちょっと軽めにフライパン振るだけで、ホットケーキとか裏返してみたいわ。
あんなん出来るかって今でも思ってる、フライパンに関しては。
こんなの考えるの私だけ?
廊下を出ると、ガンガンと人々の気持ち良さそうな歌声が響き渡っていた。
こういう騒音は、私は気持ち良い。
不快な声が一切無い。あーダメだ。また考える。
人の悪口とか陰口とか言いたくなるぐらいだったら、そんな風に大声で本人の目の前で正々堂々言って欲しいわ。
その方がまだ清々しい。
一番大嫌いなのは、本人の前でも無ければだからと言って本人が耳に入らない場所でもない、どっちつかずの場所で仲間集めて普通に生きている人間をターゲットにしてコソコソヒソヒソ嘲笑する奴ら。
反吐が出る。
人間生きていたら嫌な人間最低でも1人や2人いるだろうし、嫌な事の1つや2つあるだろうけどさ。
……勿論、私だって。
今でも思い出す。
一生忘れないし、一生恨み続ける。
でもだからって、なんで自分からその嫌な人間になりに行くわけ?
なんでそんなに他人を嫌がらせる行動を取りたいわけ?
ほら、今だってさ。
暇なのかサボっているのか知らないけど、裏で私に対してグチグチ言ってるの聞こえてますよー。
私いないタイミングで喋ってる癖に、廊下まで聞こえるって隠す気あんのか無いんだか。
「正野ウザい。ちょっとサボっただけで『次あなたが片してきてよ。サボる暇があるんだったらさ』とか言ってくる」
え、それ私悪くなくない? 正論じゃない? 正論過ぎて自分でもビビる。
「あ一分かるー。私もこの前ちょっとスマホいじったら『休憩時間でもないのにバイト中にスマホいじっちゃダメ。順番的にあなたが接客する番でしょ?』とか言ってきたわ。ってかさ、お前がしろよ。今時、あんな空気よめない厄介ババアいるんだw」
「友達とかいなさそう厄介ババア」
ん? んんんん? ……マジで私何も悪い事してなくない?
引いちゃうぐらい私、正しくない!?
ってか、あんたに至っては私より何歳か年上なのにそんな事も分からないんですかね???
あっちが年上なのに何で私、ババアって呼ばれてるんだ……そこ本当に謎。
私がその陰口大会にいつものようにお構いなく厨房に入るとピタッと陰口は止む。
この現象、何なの? 聞かれたくないの? じゃあ、最初から言うな。
「あのさ」と私が口を開く。
「間違ってる事しといて、私の陰口叩くとか何様? どうせ言うんだったら、私に直接言ってよ」
言っとくけど、私は間違っている事に対してはちゃんと面と向かって正々堂々言うよ。
こんな人達とは違って。
気持ち良いぐらいシーーーーーーンと静寂が訪れた。
で、少し経ってから「厄介ババアだる」って小声で二人ヒソヒソ話しながら厨房から出て行った。
だから、聞こえてるんだって意味ないって……って、厨房から出ていくな! 仕事しろ!
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