移民

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移民

 見渡す限り岩だらけの赤茶けた大地が広がっている。  こんなひび割れた地に、果たして根付くことができるのか。身重のサワは厳しい現実から目を背けるかのようにフードを深く被り直した。 (ここで弱音を吐く訳にはいかない。この子を無事に産むために、私は内戦の絶えない祖国を捨てたのだから。)  サワは、気持ちを奮い立たせる。  開拓地(フロンティア)での生活は貧しく厳しかったが、移民たちは力を合わせバラックを建て、牛を放し、岩をどけて地を耕した。  川から水路を引き、わずかばかりの農作物が採れるようになったころ、サワは男児を出産した。厳しい生活を強いられていた移民たちにとって、この新しい命の誕生は希望であり、喜びであった。  レイと名付けられた男児は、開拓民ら皆に愛されてスクスクと育った。
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