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別れ
「そんな条件、のめるはずがないわ!!」
アグリから打診されたサワは激怒した。
「この子の父親が内戦で亡くなったことを知っていてそんな話を持ってきたの?」
サワに問い詰められたアグリは黙ったまま視線を落とす。
「俺、行くよ。」
アグリとサワのやり取りを聞いていたレイは立ち上がった。
「俺はフロンティアのみんなに生かされてきた。今度は俺がみんなを生かす番だ。」
「駄目よ!」
サワはピシャリとレイの提案を突っぱねた。
「ここに来たときよりみんな確実に年を取っている。ここを追い出されたらみんなが困るだろう?」
「それは大人の問題よ。あなたが考えることじゃない!」
「俺はもう大人だよ。ここのみんなは俺の家族だ。俺の命一つでみんなが守れるなら俺は喜んで戦場に行くよ。」
「馬鹿なことを言わないで! そんなこと絶対に許さない!」
「母さん、俺は愛する人たちを守りたいんだ。」
「あなたが居なくなることなんか誰も望んじゃいないわ! あなたにはここでやるべき仕事があるでしょう!? 余計なことは考えず自分の仕事をしていらっしゃい!」
サワはレイに鍬をもたせるとバラック小屋から追い立てた。
これがサワとレイの別れとなった。
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