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精霊たちの手助け
「レイを……レイを見なかった?」
夜が更けても帰らぬレイを、サワは半狂乱になって探した。しかし、どれだけ駆けずり回ってもサワはレイを見つけることができなかった。
フロンティアの住人たちもはじめの一週間は一緒になってレイの姿を探した。しかしやがて自分たちの仕事に戻っていった。
「レイはこの開拓地を守るため、徴兵に応じて役人のところへ行ったんだ。」
誰もがそう言ってうなだれた。
サワは一人、フロンティアを西へ西へと進んでいった。
未開の荒野は人の侵入を拒んだ。何度も転び血を流しながらも、サワは歩を止めることはなかった。
谷から吹き上がってくる風に向かってサワは叫ぶ。
「レイ! どこにいるの?」
サワの問に風の精が応えた。
「あの子は風の子。風をまとい風に詠う。あの子の匂いを運んであげよう」
フワリとサワの鼻腔を、踏みしだかれた草の香りが通り抜けた。
匂いに誘われるかのように、サワは北に向かって歩き出した。
やがて白い花の咲き誇る川辺に出た。
「レイ! どこにいるの?」
サワの呼びかけに花の精が揺れた。
「あの子は花の子。開花を尊び花粉を運ぶ。あの子の足取りを示してあげよう」
白い花がサワを導くようにポポンと開いた。目印となる花を追いかけてサワは川をわたり森に足を踏み入れた。
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