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何を言っているんだ、こいつは。 間抜けな顔をしていたとでも言うのか、大袈裟に嘲笑していた。 そのつんざくような笑い方が理解したくないと拒んでいる脳に直接響く。 前に友人がデータ改竄はどこの会社も行なってしまう失態ではあるが、それでもその後何も無かったかのように経営しているのに、何故、小野河の会社は引き抜く箇所を間違え、呆気なく崩れるジェンガのように、凄まじい勢いで業績悪化したのかと率直なことを訊かれたのを思い出す。 俊我自体もさすがにおかしいとは思っていたが、立場上どうにもならないと思い、流れのままに過ごしていた。 そのように過ごしてしまったばかりに、そして、長年の疑問の答えがこうもあっさりと言われてしまい、しかもそれが目の前の人間がやっているとは思わなかった。 「⋯⋯俺のところは隙だらけで、呆気なくやられる⋯⋯」 「そう。前にそう言ったのをようやく理解したのね。まぁ、賭けでもあったし、試しにやってみたっていうのもあるけど」 「⋯⋯お前は、目的のためならば会社一つ潰すのも厭わないんだな」 「そうね。さっきあんたの口が述べたもののため。あんたもアルファならば分かるんじゃない? 独占したい気持ちが」 分かってしまう。 肉食獣に睨まれているような目につられて言ってしまいそうになったが、「違う」と否定した。 後にも先にもないと思うぐらいに愛したかったオメガと過ごすうちに、目の前にいる女を欺いて共にいようと考えたことがあった。 あのオメガとあのような場所ではない所で出会い、家柄にそぐわない相手だと簡単には一緒にいられないけれども、説得して認めさせようと思ったこともあった。 だから、この女のような周りを巻き込んでまで幸せを手に入れるという独占欲とは違う。
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