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☆
それは、まさに呪い。
「オレが行こうか?」
自らの疳の虫に締め付けられる幽玄を見て、サダカは提案したが断られた。
「俺の仕事だ」
※※※
八月も終わろうというのに、暑い日だった。
一会町立一会東三小学校。
そこの応接間で、青瀬学芸員は興味深くにノートを読んでいた。向かいに座る小学五年生の自由研究だ。『ヘドロゲーンの正体について』。
「すごい、こんなによく調べたね…」
「はい、最初はパパ…父の話からで、OBのおじいちゃんはヘドロゲーンを知らなかったので、父に年が近い人から聞いてまわりました」
『ヘドロゲーン』は、この学校の怪談の一つ。暑い日になると、6年3組の窓際一番後ろにヘドロゲーンという臭いお化けが出る、触れると臭いが移る、というものだ。今も窓際の後ろには座席を置かない。
槙野双葉という少女は、父の思い出話からこの怪談が出来るきっかけを突き止めた。20年ほど前に暑くて汗臭かった子供がそこに座っていて、ヘドロゲーンと渾名されたらしい、と。
「本当に、そう言われた子がいたんだ…」
「はい。でも、それが23年前という人もいたし、25年前という人も、21年前という人もいて、ハッキリしませんでした。その子が誰かもわかりません」
双葉は大人びた喋りを心掛けた。研究に自信があった。いじめ良くないというテーマもいい。きっと全国でも賞を取れる。その時のための練習だ。
「今年の自由研究クラス一位の作ですが、郷土資料館もご興味あるかと思いまして」
隣に座る若い担任の言葉に、実は彼の倍以上歳をとっている青瀬は子供のように頷いた。
「大変あります! ありがとうございます!」
「よかった。この怪談は今日で終わるかもしれません。いい記録になると思います」
「終わる⁈」
「実は…」
担任の顔が曇った。
「ヘドロゲーンの席の近くになったことでからかわれて、不登校になってしまった子がいましてね。その子のために、家族が霊能者を雇いまして、もうすぐこちらに来ます」
「え」
ノック。
「失礼します」
戸を開けたのは、青瀬がよく知る霊能者だったが、見たことないほどやつれていた。
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