ヘドロゲーン最期の日(2019年8月30日)

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☆ 「やあ。今日はお疲れ様」  夜。青瀬は、駅の広場でうずくまってる霊能者を見つけた。  幽玄は顔も上げなかった。 「あの先生や子供らに猿芝居仕込んだの、センセですか」 「うん…必要になるかもと思って」  青瀬の突飛な提案に担任は、その場にあるものをダンボール箱に用意してくれた。  双葉もついて行くことにした。内心、正体を知らない方がよかったと思ったが、もう後には引けなかった。 「突然、国語の授業が始まって驚きました。教科書貸してもらって、バケモノと一緒に読みましたよ。あの先生、教えるのが上手かった」 「そう」 「バカじゃないですか。あの頃の苦しみが、たかだか数分の楽しい時間で解消されるわけ、ないじゃないですか」 「……そうか、軽率だったね。ごめん」  幽玄が、青瀬の前に黒い筒を突き出した。  ガサゴソ、中で何かが蠢く音がする。 「教科書に気を取られてる隙に、封じました」  青瀬の方は見れなかった。筒を持つ手が震える。 「あのとき受けた苦しみは、まだ消せません、が…あのとき冷静になれたのは、仕事が出来たのは……サダカやまゆさんやセンセやじいさんが…普通に接して…救ってくれた時間があったから…」  広場に、ポタポタ涙が落ちる。 「ありがとうございます…本当に、ありがとうございます…」  青瀬は、幽玄の肩に手を添えた。 「どういたしまして。さあ、行こう。居酒屋でみんな待ってる」  幽玄は、筒を持つ手で涙を拭った。苦しい夏は、これで終わり。 「誕生日おめでとう、榊君」 ※※※  槙野双葉の自由研究は、二学期になってから内容が追加された。『ヘドロゲーン』本人のコメント。  名前も顔も伏せたそれは、嘘くさく余計な付け足しにも見え、全国大会にも選出はされなかったが。 「二度と起こすな馬鹿野郎」
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