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外はしとしとと柔らかい雨が降っていた。
(この星は雨でも優しいんだね)
とチイは思った。
今のチイには家の中よりも、雨に降られたほうが心地よかった。
「お母さん。どこに行っちゃったの」
チイはときどき、お母さんのことが恋しくなる。お母さんがいれば、お父さんの帰りを寂しく待っていることもなくなるのに。
そんなことを考えながら、ぼんやりとヒマワリ畑の中へと歩きはじめた。
昼間は美しいヒマワリたちも、今は少し不気味な雰囲気だ。だが今のチイにはそんなことすら目に入らなかった。
「ここどこ?」
ずいぶんと歩いたせいで、また迷子になってしまった。しかも今度は雨の夜で、お父さんも近くにいない。
「だれか!」
叫んでも、声は雨にかき消された。
「お父さん!」
呼んでも来るわけがない。
「ヒクル!」
こんな雨の日にヒクルがいるとは思えない。チイはそう思ったが、そのとき傘を持ったヒクルが現れた。
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