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風の音も雨の音も聞こえないヒマワリ畑を、チイとヒクルは並んで歩いた。
「もうすぐ夏が終わっちゃうね」
この星の夏は短い。お父さんがそう言っていたのをチイは思い出した。
「夏が終わったら、ここのヒマワリたちもみんな枯れちゃうの?」
ヒマワリ畑を見渡せる開けた場所で出たチイの言葉に、ヒクルは足を止めた。
「ヒクル、どうしたの?」
「ごめん、チイ。僕はここから先にはいけないんだ」
「えっ」
「えっと、そろそろ帰らないとお父さんに怒られちゃう」
「あ、そういうことね」
チイはヒクルを見つめた。ヒクルはグラスについた水滴のような美しい目をしていた。
「また会おうね、ヒクル」
その言葉にヒクルは近くにあったまだ背の低いヒマワリの花をとると、チイの髪に差した。
「あげる。似合うと思う」
「ありがとう。なんか照れるね」
「僕のこと、忘れないで」
「忘れるわけないよ。また会いに来るから」
ヒクルは小さくうなずくと、チイの手を握った。
「会えてよかったよ、チイ」
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