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それからしばらく、ヒクルと会うことはなかった。
チイは家で遠隔で学校の授業をうけたり、お父さんと二人分の朝ごはんと昼ごはんと晩ごはんを作ったりしていた。
ときどきベランダからヒマワリの畑をみた。ヒクルのことを考えていた。
その日は珍しく雨だった。
いつもなら夕方には帰ってくるお父さんが、夜になってもなかなか仕事からかえってこない。せっかく作った晩ごはんが冷めてしまった。
「ごめん、チイ。遅くなった」
お父さんは汗と泥にまみれた顔で、玄関から入ってきた。
「お父さん遅いよ」
「悪かった。仕事が長引いてな」
チイはお腹がすきすぎて、不機嫌になっている。
「遅くなるなら連絡してって言ったでしょ!」
「ごめん、どうしても手が離せなくて」
チイは自分が大切にされていない気がした。
「さあ、ご飯にしよう」
「やだ」
「えっ」
「お父さんなんか大嫌い!」
チイはそう言って家から飛び出してしまった。
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