モテた10年前

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モテた10年前

もう10年前になるなんて、時代というのはおそろしい。 中学2年生のとき、私はモテた。いわゆる、モテ期というもの。教室の机は男女でくっつけなければいけなかったのだが、席替えをすると大概隣の席になった男子は教科書を忘れてきた。 最初は忘れっぽいんだなと思っているだけだった。だが、いくらなんでも多すぎる。前に隣だった野口くんも、その前の山口くんも、その前の前の北山くんも、みんな忘れてきた。私の反対の方向を向き、誰かとニヤニヤと笑っていた。 私もストレスを感じ始めてやっと気づいた。 「わざと忘れてきてる」 教科書を一緒に見ながら、手が触れ合う。お互い照れながら、次のページをめくる。 なーんて、そんなものはない。 わざと忘れてきてるのだと気づいてからは、 もう誰にも教科書を貸さなかった。頼まれても、無視した。 モテたのは、顔立ちのせいだろう。自分としても悪くはなく、中の上ぐらいはあるだろうと自負していた。 それが良くなかったのかもしれない。
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