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M 86
抱きしめられて眠って、キスされて起きて、2人で一日中べったり一緒にいて、ゴールデンウィークはほんとにゴールデンだ。
ずーっとゴールデンウィークならいいのになぁ…。
「おかえり、翠里。ちょっとパン粉買ってきて。賞味期限切れてた」
晩ごはんの手伝いくらいしなきゃと思って帰ってきたら、玄関で母にサイフとエコバッグを渡された。
「プライベートブランドのやつ?」
「そうそう、いつもの。あ、お菓子とか買ってもいいわよ、200円までなら」
「はーい、行ってきまーす」
回れ右して玄関ドアを開けた。
1人で出かけるの久しぶり。すぐそこのスーパーだけど。
たいてい慎と2人で行くから。
パン粉とお菓子を買ってスーパーを出たら、井上さんが歩いて来てるのが見えた。
「あー、翠里くん。また会ったねー。お買い物?」
「うん、おつかい。パン粉の賞味期限が切れてたーって」
スーパーの入口から少し離れた所で2人で立ち止まった。
「そうなんだー。あ、だから1人なんだね」
「!」
にこっと笑いかけられて、ついビクッとした。井上さんがふふって笑いかけてくる。
「ね、翠里くん。花火、もうやったの?」
「え? ううん、まだ」
なんで?
井上さんが「ふーん」みたいな顔をして、それからニヤッと笑う。
「私のね、妹の友達が翠里くんたちのマンションに住んでるのね、それで…」
井上さんはオレをじっと見た。
「あのマンションの中庭で、花火やったことあるんだ、私」
「え?」
「住民が一緒にいれば、やれるんだよね? 花火」
「あ…」
「でも間宮くんは、混ざってほしくなかったんだよね、私たちに」
ふふふって笑った井上さんがオレを覗き込んでくる。
やばい 顔赤くなっちゃうっ
「すごいね、ますます仲良しなんだね、翠里くんと間宮くん。いいなぁ。あ!このことね、あの2人には言ってないから。あの子たち間宮くんのこと諦めてないけど、私がなんとかしとくから安心して、翠里くん」
「え…」
井上さんがまたふふって笑う。
「じゃ、またね翠里くん。間宮くんによろしくねー」
「あ、うんっ」
バイバイって手を振りながら井上さんはスーパーに入って行った。
オレもつられて手を振って、井上さんの後ろ姿を見送った。
…ちょっと待って
井上さん、うちのマンションの花火のルール知ってたの?
知ってて知らないフリしてくれたの?
ていうか、あの感じだと井上さん…
「あー…、それはバレてるな、俺らのこと」
「…だよね、やっぱり」
膝の上に跨って、慎を見下ろしてる。慎、結構まつ毛長い。
「バレるもんだなー。そっか、知ってたのか井上、花火のこと」
慎がオレをぎゅうっと抱きしめた。
「大丈夫かなぁ…」
オレも慎を抱きしめる。
「大丈夫だろ。言いふらしてやろうとか思ってんだったら、もうやってるだろうし。それにわざわざ翠里にそんな話しないと思うし…。まあ、油断させといてっていうパターンもなくはないかもだけど、そんなタイプじゃないだろ井上」
「うん…」
「じゃ、井上を信じようぜ。井上もお前の友達だしな」
ちゅって軽くキスをされた。
「友達…っていうほどでもなかったけど…。まあ喋ったりはするぐらい」
「顔見て声かけてくるなら十分友達じゃね? 向こうは名前で呼んでたし、お前のこと」
ちゅっちゅってキスしながら、唇をくっつけたまま喋ってる。
「だって保育園から一緒だったし井上さ…っ、…んっ」
大きな手で頭を押さえられて舌を入れられた。
口の中を抉るように舐め回されてぞくぞくする。
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