Sin  51

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Sin  51

『慎はオレのだもん。誰にも渡さない』  俺にぎゅっと抱きついて、翠里がはっきりとそう言った。  嬉しくて嬉しくて、ちょっともう現実感があんまない。  やばい…しか出てこなくてマジでやばい。  いつものように2人で洗い物をしていても、なんかふわふわしてる。  翠里が俺をちらっと見上げてくるのがめっちゃ可愛い。  最後の皿を食器棚に仕舞った翠里を後ろから抱きしめた。 「…しっ、慎…っ?」  翠里があたふたして、視線をきょろきょろ動かしてるのが食器棚のガラスに映ってる。 「…かわいー…」  俺のものだ、って思いながら翠里を両腕でしっかりと抱きしめた。  翠里がその俺の腕に両手を添えてきゅっと握った。  ガラスに映った顔、めっちゃ可愛く笑ってる。  すげ…  一方通行じゃないんだ  翠里も俺のこと好きでいてくれてるんだ  身体の奥の方から高揚感が湧いてくる。 「…慎…、あの…」 「うん?」  俺の腕の中で翠里がもじもじしてて可愛い。 「向き、変えたい」  一所懸命身体を捻って後ろ見てくる上目遣いも、すっげぇ可愛い。  腕の力を緩めたら、翠里はもぞもぞ動いて俺の方を向いた。そして俺の背中に腕を回していく。    ドキドキ ドキドキ   やばい 心臓破れる  翠里が俺の胸にぴったりと頬を寄せて抱きしめてる。 「…慎、すっごいドキドキしてるね…」  少し掠れた声で翠里が言った。  恥ず… 「オレも…ドキドキしてるから、嬉しい…」  えへへって笑った翠里が俺に頬を擦り寄せる。その細い身体を両腕で抱きしめた。 「翠里もドキドキしてるの?」  少し、翠里の体温が上がってきてる気がする。 「してる…。も、すっごい…やばい…」  うわ…  見上げてきた翠里の大きな目が潤んでキラキラと光った。丸い頬はほんのり赤く色付いている。そして唇をきゅっと噛んだ。  なんだ、この可愛い生きものは…っ  …ちょっと…、大丈夫かな、俺…  翠里を怖がらせないようにちゃんとブレーキかけないと… 「…慎、お母さんとか急に帰って来ちゃったら大変、だから…」  緊張してるのが伝わってくる、いつもより少し高い声。 「部屋、行こ?」  や、ば… 「ん、分かった。行こっか…」  翠里本人に、誘ってるつもりなんかないって分かってっけど、でも…  これはかなりやばい…
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