S   54

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S   54

 合わせた唇の間で互いの舌を触れ合わせる。温かくて、ざらりとした感触。  濡れた音を立ててキスを重ねて、翠里のサラサラの髪に指を差し込んだ。  翠里は俺の背中にしがみつくように指を這わせている。  息が苦しくて、でもキスをやめたくない。唇を合わせたまま動きを止めたら、翠里が俺の下唇にちゅっと口付けて、はぁはぁと熱い息をついた。  その翠里が吐いた息も俺のものにしたい。  再び唇を重ねて舌を絡め合う。翠里の上顎を舐めてやると喉奥でくぐもった声を上げた。  ちゅっと唇を離して、腕の中で少しふにゃっとなった翠里を見下ろす。  涙の滲む目元に口付けて、唾液の流れた口元にもキスをした。  キスで赤みを増した翠里の濡れた唇が、甘い息を吐きながらぱくぱくと動く。 「…翠里、苦しい? だいじょぶ?」  苦しいって言われても、もっとキスがしたいんだけど。 「ん…あ…、へい…き…っ」  とろんと潤んだ瞳で、翠里が俺を見上げてくる。 「ね…、慎…」  いつもより少し高くて掠れた声で名前を呼ばれて、頭がじん、と痺れた。 「キスって…きもちいーね…」  ふふって笑いながら、少し舌っ足らずな感じで言った翠里がやたら色っぽくて狼狽えた。  やばい こいつ…  翠里が、見たこともない魅惑的な微笑みを浮かべて俺を見る。 「…もっと…して…?」  う…わ…っ  ドキンとまた大きく鼓動が跳ねた。やや乱暴に翠里の頭の後ろを掴んで口付けて、その狭い口内を舐め回す。互いの唾液が混ざり合ってくちゅくちゅと水音が立った。  俺に必死でしがみついている翠里の腕の力が徐々に抜けていってる。    支えてやんなきゃ…。  密着したらバレるな、勃ってんの。  まあしょうがない。好きなやつとキスして興奮するなって方が無理だ。  でも、翠里ひくかな。がっつきすぎだって。  そんなことを考えてる間に、翠里の身体がぐんにゃりと力を失っていってた。慌ててその細い腰に腕を回して、ぐいと抱き寄せる。 「…っ」  あ…っ  思わず唇を離して、翠里と見つめ合った。翠里は元々大きい目をさらに見開いて、真っ赤な顔をして俺を見ていた。  その顔を見ながら、翠里を抱いている腕に力を込めた。互いの間で熱く反応する身体を感じる。  俺だけじゃ、ないんだ  恥ずかしそうに眉を歪めた翠里の頬に口付けた。そしてまた唇にキスをする。一瞬ぴくりと身体を震わせた翠里は、でもすぐにキスに応じた。 「…翠里…」  唇を付けたまま呼びかけると、翠里の伏せていたまつ毛が僅かに上がった。 「…触ったり…してもいい…?」 「…っ」  びくっとして俺を見上げた翠里の目を覗き込みながら、しっかりと身体を密着させる。 「翠里が嫌なら、キスまでで我慢する…」  まあ、もう抜かなきゃ収まんねぇからトイレに直行だけど。 「…どうする…?」  耳元で囁いて、真っ赤になった耳たぶを唇で挟んだ。 「…あ…っ」  肩をすくめて身を捩った翠里の硬くなった性器が俺の脚に当たっている。  翠里だってこのまま、ってわけにはいかないだろ、これ。  ちゅっ、とわざと音を立てて翠里の耳たぶにキスをした。翠里がまたびくりと身をすくめて、肩で息をしながら俺にしがみついてくる。 「翠里…?」  髪や頬にキスをしながら呼びかけると、翠里は涙で潤んだ上目遣いで俺を見た。 「…さ、さわるって…どれぐらい…?」 「ん?」  困り顔で見上げてくんの、めちゃくちゃ可愛い。 「は、はじめて…だもん…。だいじょぶか…わかんな…」  うわ、やべ マジかわいー 「ああ、うん。そっか、そうだよな。ごめんごめん翠里」  涙目になってる翠里の目尻にキスをした。翠里がスンッと鼻を啜る。 「じゃあさ、翠里。どこまで大丈夫か、試してみようか」 「…え…?」      
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