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「それと、あと他にも買う? 翠里」 「ううん。いっぱい入ってるからこれだけでいいかな」 「ん、オッケー」    2人でレジに向かう間にすれ違った女の子も、慎を見てた。  少し、慎と距離を詰める。大きい花火の袋を両手で持ってるから、慎のTシャツを掴んだりはできない。  だいたい半分ずつお金を払って、花火は慎がバッグに入れて持ってくれた。 「あ、翠里。ちょっと待って」 「え?」  ドラッグストアみたいなコーナーで慎が立ち止まった。 「そうだな…。ここでシャンプー見てるフリしてて」 「え?」  なんで? 「いいから、な?」 「慎?」 「ここにいて?翠里。で、あんまこっち見ないで」  にっと笑った慎が、シャンプーの棚と向かい合わせの棚の端っこの方まで歩いて行った。  見ないでって言われると、見たくなっちゃうじゃん。  言われた通りシャンプーを見てるフリをしながら、横目で慎を見る。慎は少し屈んで棚の商品を見ていた。  長方形の箱?  なんだろ。ていうか、なんで一緒に見ちゃいけないの?  でも完全に隠す訳でもない。 「あ、ねぇねぇ。あたしシャンプー見たーい。今の飽きてきちゃってぇ」  女の子の声がして、咄嗟にシャンプーに目を戻した。  甘い香りを振り撒きながらやって来たその子たちは、さっきの井上さんたちよりメイクも髪型もハデで、肩とかお腹とか出たカラフルな服を着てる。ちょっと苦手。 「私はねー、今これ使ってるよー、っていうか、ねぇ」 「え? なになに?」  その3人の女の子たちが、慎のいる方向を見た。女の子のグループって3人が多いの、なんでなんだろ。3人が目を見合わせてる。 「イケメンがゴム買ってる」  え? 「そりゃ買うでしょ。彼女いるでしょ、あんなカッコよかったら」 「えー、いいなぁー。抱かれたーい」  え? え? え? 「あ、2つ取ったよ、やだぁ」 「一箱で結構入ってるよね、何回するのー?」  ゴム…って、あれ、だよね?  かぁっと顔が熱くなってくる。  ポケットの中でスマホが震えて、びくっとして画面を見た。 ーーレジ終わったから下りエスカレーターのとこまで来て。  慎だ!  ドキンッと大きく心臓が跳ねた。密かに深呼吸を繰り返しながら『了解』のスタンプを送った。  下りエスカレーターってどこ?  きょろきょろと上方を見回して、矢印を見つけて進んだ。しょっちゅう来る店じゃないから、っていうか、いつも慎に付いて歩いてるだけだから覚えてない。  角を曲がって慎が見えたらホッとした。出先でこんなに慎と離れること、あんまりないから。  オレを見つけた慎が、周りをちらっと見渡してからオレに近付いた。  なんで? 「ごめんな、翠里。迷わなかった?」  エスカレーターに先に乗った慎が、オレを振り返る。 「うん、大丈夫。でも…」  エスカレーターの、一段下に乗ってる慎がオレを見上げた。 「…翠里、顔赤くなってる」 「だって…」  俯いて顔に手を当てたらすごい熱かった。 「まあ、あけすけな話っぷりだったもんな、あの子たち。ちょっと離れてた俺まで全部聞こえてたし。だからさ、お前と合流すんの見られたらまた何か言われるかもって思って」 「あ…」  見上げてくる慎の眉間に少し皺が寄ってる。
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