M   74

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M   74

「…中1から、チョコもらってないよね、慎」  答えは分かってるのに、それでもその答えを慎の口から聞きたい。 「そりゃね、翠里のこと好きって気付いたのに貰えないだろ」 『好き』  それ聞きたかった。  へへって笑って慎の肩に頭をのせる。慎がオレの頭や背中をゆっくり撫でてくれた。 「翠里、わざと訊いたな? さっきの質問」 「え…っ」  バレた…っ 「俺が何て答えるか、なんて分かるだろ?」  でも声怒ってない…。優しいまんま…。 「…だって…」  オレを撫でる手も、優しいまんまだ。 「聞きたかったんだもん…」 「…そっか…。ほんと可愛いなぁ、翠里は…」  ふふって笑った慎が、オレをまたぎゅっと抱きしめてくれる。 「あーあ、明日も休みだったらなぁ」  慎がおっきい手でオレの頭を撫でながら残念そうな声で言う。 「そしたら一日中一緒にいられんのにな」 「うん…」  明日は、授業の間は慎に会えない。 「ね、慎。今夜って…、泊まっちゃダメだと思う?」 「んー…。まあ、そろそろ泊まりすぎって言われそうだよな。連日だし、明日学校だし…」  慎はオレの頭を背中を撫でて、そして頬にちゅってキスをした。 「…明日、学校だから…、今夜も慎と一緒にいたい…」  わがままを、言ってみた。 「うん…、そうだな。俺もおんなじ。今夜も翠里と一緒がいい」  少し掠れた声で慎が囁く。 「…でもやっぱ…、やめといた方がいいんだろうな、今夜は…」 「…うん…」  その方がいいって、解ってる。いい加減怒られる。  でも… 「…いっしょにねたい…」 「うん、うん、そうだな、翠里…」  ぎゅっと抱きしめ合いながら、もう一度わがままを言った。耳元で聞こえる慎の声が優しくて泣きそうになった。  オレが帰る時、慎が「送って行きたいくらいだ」って言った。 「まあ、さすがに怪しいから無理か」  って苦笑いした顔、カッコよかった。  花火はまた今度やることにして、家に帰って自分の部屋に入ったら、今朝シーツとか剥がしたまんまでベッドがぐちゃぐちゃだった。  クローゼットからシーツ類を出してベッドを整えていく。  昨夜ここで慎と…  かぁっと身体が熱くなってくる。色んなこと、思い出しちゃう。  カバーをかけた枕をバフバフたたいた。    …慎の匂い、しない…  当たり前だけど淋しい  オレ、慎の中毒になってるのかもしんない。  しかもあっという間に重症だ。だって、まだ24時間経ってない。  慎に好きって言われて、慎を好きって気付いて、慎に好きって言ってから…。  まだ、恋人1日目  1日で、何回も心臓壊れそうになった。何十回も慎のこと好きって思った。  きっと明日もそう。明後日も、明明後日も。  ずっとずっと  毎日慎にドキドキして  毎日慎を好きって思って  毎日慎と恋をするんだ…    
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