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S 76
授業が長くて長くて、6時限目なんて永遠に終わらないんじゃないかと思った。
ホームルームがやっと終わって、教室の出入口に目を向けた時、翠里が走り込んできた。
「慎っ! かーえろー!!」
「わっ」
満面の笑みで真っ直ぐ走ってきた翠里が俺に抱きついてきた。
「お前らほんっとに仲がいいなぁ」
絢一が笑いながら言う。
俺は抱きついてきた翠里を抱きしめ返していいものか一瞬考えて、前にもやったなって思ってぎゅっと抱きしめた。
翠里がえへへって笑って見上げてくる。
めっちゃかわいー
「どうする? この後どっか寄る? つかおれ親休みで家にいるから、まだ帰りたくねんだけど」
大田がカバンを肩に掛け直しながら言った。
「あ、じゃあさ、ゲーセン行こうぜ、大田」
スマホを確認してポケットに入れながら絢一がちらりと俺を見る。
「格ゲーで対戦しようぜ。上手いんだろ?」
「んー? まあまあ?」
大田がイヒヒと笑った。
「そのまあまあは、ぜってぇ強ぇやつだろ。負けねーぞ? てことで行くぞ、大田」
絢一が大田の背中をたたいた。
「間宮たちは?」
大田が俺らの方を見る。さすがにいつまでも抱き合ってはいられないから、俺は翠里の肩に腕を回してた。
「そいつらゲーセンのゲームやんねーもん」
絢一がまたちらりと俺の方を見る。
やらないことはないけど、外で金払ってまでゲームをやりたくはない、ってのは本心だ。家にゲーム機はあるし、対戦なら翠里とやればいい。今ならオンラインだってある。
「だから2人で行くぞ、大田」
「へー、そうなんだ。オッケー」
大田が、うんうんて頷いてる。
「まあ駅前までは一緒に行こうか」
そう言って絢一が歩き始めて、その隣に大田が並び、俺と翠里は2人の後ろについた。
なんとなく、絢一の態度が気にかかる。
…もしかして、気付いてんのか? 俺らのこと…
駅前まで4人で歩いて、ゲーセンの前で2、2に分かれた。
大田の肩に手をのせた絢一が「じゃあな」って手を振った。
翠里は「またねー」って言いながら、俺の腰をぎゅっと抱いた。
「俺らは帰ってスマホのゲームやろっか」
「うん、やるやるー」
見上げてくる笑顔が可愛い。
電車では周りに気遣って声を潜めてるふりをして、顔を寄せ合って喋った。
以前から同じようなことはしてたけど、なんか気分が違う。
くすぐったそうに肩をすくめた翠里が、はにかんだ笑顔を見せた。
誰にも見せたくねぇな
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