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S 78
「えー、ゴールデンウィークが終わったらすぐ、体育祭があります。1学年8クラスなので2クラスずつ、赤、白、青、黄で、うちは赤組です。分け方はいつもの体育と同じです。まあ小中学校ほどは練習はないですけど、ない分段取りとか頑張って覚えてくださいね」
担任の女性教師が、プリントを最前列に雑に配りながら言った。
てことは翠里も赤か。
5時限目のロングホームルーム。ただでさえ昼飯後で眠い上にゴールデンウィークの間でクラス全体がぼやっとしてる。
「ねぇねぇ、知ってる? 体育祭のジンクス」
後ろの席の女子たちがこそこそ喋り始めた。
「え? なに? 知らなーい」
「体育祭でね、好きな人とハチマキ交換したら想いが叶うんだって」
「えー? ほんと?」
「片想いだったら両想いになれて、両想いだったらずーっと一緒にいられるんだって、部活の先輩が教えてくれたの。実際そういうカップル結構多いらしいよ」
「へー、知らなかったぁ。いいね、そういうの」
ふーん。女子は好きだよな、そういうの。
「えっと、じゃ、ここからはそのプリントに書いてある競技の出場者を決めまーす。クラス委員、お願いします」
中学で生徒会長をやってたってことで選ばれた委員長と、くじ引きで決めた副委員長が黒板の前に立った。
「えっと、走る系の種目はスポーツテストの記録とかで決めるのもありかなって思って持ってきてるんですが…」
委員長が記録の書かれた紙と思われるものを出してみせた。
「いいと思いまーす」
体育祭かー…。翠里は何に出んのかな。
「50メートル走、橋本くんと間宮くん同タイムで1位だったんですねー。2人には『リレー、スウェーデンリレー。各男女1名ずつ』に出てほしいですね」
げっ
思わず絢一の方を見たら、絢一も俺を見てた。
確かに「タイムおんなじだなー」って笑ったけど…。
リレーは100メートル、スウェーデンリレーは100メートルから50メートルずつプラスされていく変形タイプらしい。1年女子が100メートルで男子は150メートルだそうだ。
午前の競技の終わりがリレーで、全競技の最終がスウェーデンリレーか…。
「はい! おれリレー出ます!」
「絢一、お前…っ」
右手をピンと伸ばして上げた絢一がニヤリと笑った。
…やられた…っ
「はい、じゃ橋本くんがリレー出てくれるってことなので、間宮くんはスウェーデンリレーお願いします」
委員長が「当然」みたいな顔で俺を見た。クラスメイトたちもなんか頷いてる。無言の圧を感じる。
まじか…
「…はい…」
これを断れるやつ、いないと思う。
「はい、では2人に拍手!」
委員長の号令で拍手が起こった。絢一のやつは「頑張りまーす」とか言ってやがる。
あー…くそっ 面倒くさいのになっちまったし…っ
他の競技も順に決まっていって、結局借り物競走にも出ることになった。
絢一はリレーと、カゴが逃げる『追いかけ玉入れ』、大田は障害物競走、後は徒競走と綱引きにはクラス全員が出る。
「はい。これで全部決まりました。みなさんお疲れ様でした。えーっと、リレーとスウェーデンリレーに決まった人は、他学年と合同なので放課後に練習がありますので、サボらず出てください。以上です」
うわ… マジか…
翠里、どうなったかな。
あいつも結構足速いしリレー選ばれてねぇかな。
まあ、練習終わんの待っててはくれるんだろうけど…。
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